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カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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ワインとデキャンティングの関係 その2

ワインに空気を触れさせるのは何故?
いったいどんな場合にデキャンティングが必要なの?
といった、疑問にお答えするブレイクの記事、和訳の後半です♪


Wine decanting: Give wines some air by W. Blake Gray

ワインの香り良くし、味を良くするために何をしたらいいのでしょうか?

「すべてのワインはデキャンタされるべきだと思います」
と語るのは、Maximilian Riedel氏。
グラス製造で有名なリーデル家の一員であるからと言って、
彼の言うことが、あながち誇張だとは限りません。

「デキャンティングは、キャンドルを灯して、ゆっくり行わなければならない、
と思っている人が多いけれど、澱(おり)が無い限りそれは不要。
澱が無いのだったら、私はむしろそれをエアレーティング(通気)と呼ぶわ。
デキャンタがなければ、ジャムの瓶でも出来る事よ。」
と言うのは、CIAのKaren MacNeil女史。

コルクを抜くだけでは、ワインは大して通気しません、
なぜなら、空気に触れる表面部分が、ほんの少ししかないからです。
そこで、ジャムの瓶でなくてもいいのですが、ボトル半分のワインを
他の容器に移すことで、空気を取り込むという目的は達成できます。

ただし、端から何でもかんでもデキャンティングすれば言い訳ではなく、
「世界中のほとんどのワインは、空気に触れることによって良くなるけれど、
中には例外もあります。古くて高いブルゴーニュのワインなどは、
エアーを入れ過ぎると逆に、崩れてしまうわ。」
とMacNeil女史は注意します。

ワインとデキャンティングの関係 その2_c0185058_233338.jpg


レストランProvidenceのワインディレクターLangley氏は、
「デキャンティングに耐えられないワインは、飲むにも耐えられないという事。
ここでは白ワインも、樽熟成したものなどは特に、デキャンティングします。
デキャンタすることで、香りがたち、深いワインになります。」と言います。

Langley氏は、特に若い赤ワインには、ダブル・デキャンティングを施します。
まずボトルからデキャンタに移し、それをまた、別のデキャンタに移すのです。
この作業によって、短い時間に出来る限りワインを空気に触れさせることが可能です。

「大人数の場合、飲まれる速度が速いから、
自然にワインが開くのを、待っている時間が無いのです」と氏は語ります。

ワインとデキャンティングの関係 その2_c0185058_2342373.jpg

エアフローの研究の結果、開発されたのはヴィンチューリ。
いわゆる、空気を入れるための、おしゃれな漏斗(じょうご)。
ヴィンチューリはテイスティングルームで人気ですし、
レストランでも使われています。

ドイツのガラス会社Eisch(アイッシュ)では、製造過程で"oxygen waves"(空気波)を
使用することで、通気性のある特殊なグラスを開発したとの事。
注がれて2分から4分ほどで、ワインに空気が行き渡るそうです。
CIAでは、Eischのグラスが使われており、MacNeil女史は、
カラクリを100%は理解しないものの、その耐久性を評価すると言います。

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一方で、リーデルは、さらにその先を行くようです。
このオーストリアの会社は、葡萄の種類毎に、違ったグラスを買うべきだと説きます。
Maximilian Riedel氏によると、個別に作られたデザインが
それぞれの香りの質を増すとのこと。

Waterhouse氏によると、確かにグラスのデザインは、香りに影響しますが、
それはオープン・エリアの大きさの違いからくるもので、
グラスが広いほど、香りを含んだ空気が、ワインの上に蓄積されます。
また、液体の中の香りが、浮上してくるまで、2,3分待つ必要があります。

ワインとデキャンティングの関係 その2_c0185058_2345382.jpg


グラスの形によって、微妙な違いはあるかもしれないと認めるものの、
MacNeil女史のグラス選びは、とてもシンプル、大きいほど良し。
「レストランでは、いつも大きなグラスをお願いするわ。」との事。

でも、この法則は、フォーティファイド・ワインや、
スピリッツには当てはまりませんのでご注意を。
オープニングが広いほど、アルコール分が集中してしまうからです。

ワインとデキャンティングの関係 その2_c0185058_2352153.jpg


Waterhouse氏が言うに、空気に触れることは、しばらくの間は良いものの、
最終的には、ワインの香りを壊してしまいます。

殆どの赤ワインのように、面白い2次的なキャラを持っている場合、
2,3日は保ちます。
しかし他のワインともなると、その破壊の進行度は、急速です。
シンプルな白ワインが、その新鮮な香りを失ったら、
他にどういった魅力が残りましょうか?

もしもワインを飲みきれなかったら、プライベート・プリザーブのような
ナチュラルガスを使うことをお勧めします。
それにより、空気に触れる進行度を、遅らせることができるからです。

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さて、ワインの持つ一面に、精神的な要素というのがあるのかもしれません。
もしも、あなたがデキャンティングした方が、味が良いと言うならば、
また特別なグラスを使った方が、美味しくなると思うならば、
あなたにとって、それはまぎれもない事実です。

Cal State Fresnoの研究者Susan Rodriguez女史が最近行った、
ブラインド・テイスティングの実験では、面白い結果が出ています。
ボトルから注がれたばかりのワインと、2時間デキャンティングされたものを
用意したところ、被験者たちは、両者の違いが見分けられなかったそうです。

この実験をセッティングした人々は、とても仰天したと言うことです。
だって、“違いは明確だ”…と思っていたのですから。

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以上、LAタイムスに掲載された、ブレイクの記事の和訳でした。
オリジナルを読みたい方は、こちらをどうぞ♪

なぜワインを空気に触れさせる必要があるのか?
答えは、ワインの香りを最高の状態で楽しむため。
その為に、じつに様々な製品が市場に出回っています。

基本的にグラスは赤白2種類あれば、充分かなと…思いますが、
楽しみ方は人それぞれなので、
ワインごとにグラス、そしてデキャンタを揃えるのも、一興かもしれません。

このデキャンティングの実験、大人数で集まるときに試したら、楽しそうですよね。
同じワインを2本用意し、1本は2時間前にデキャンタに移し、1本は飲む直前に開栓。
キッチンでこっそり、それぞれをグラスに入れて、お客様に違いを述べてもらう。
果たして違いを感じるのか?具体的に感じた違いは何か?
う~ん、面白そうです☆

by sfwinediary | 2009-08-23 02:29 | ワインの雑学