カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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ワイン好きが観た、日本版『サイドウェイズ』

全米にピノ旋風を巻き起こした映画Sidewaysの日本版リメーク『サイドウェイズ』。
アメリカに滞在する、4人の日本人の人間模様を描いたドラマ。
週末にナパで開かれた、プレミアム公開を観てきました。

異文化の中に身を置く、日本人のドラマとしてとらえれば、面白い映画。
でも、ワインの映画としては、残念ながら期待ハズレ。

そもそもオリジナルSidewaysの主役は「ワイン」とも言えました。
舞台は、サンタバーバラ(Santa Barbara)でなければならなかったのに対して、
日本版では、ナパ(Napa)はたまたま背景にあるだけ。
別にワインカントリーでなくて、NYでも、LAでも展開可能な物語。

残念ながらオリジナルSidewaysを魅力的に輝かせていた
映画の根底に流れる“ワインに対する情熱”は、感じられませんでした。

ここから先はネタばれになりますので、知りたくない方は、今日はここまで~☆
(と言っても、ストーリーは公式HPで公開されていますね)

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映画が上映されたのは、ナパのダウンタウンに近い野外ステージ。
集まったのは、多くの邦人、映画に登場したワイナリー関係者など、200人ほど。
暑い日でしたが、8時の上映時間には涼しい風が吹いて来て、いい感じ。
映画祭の主催者の挨拶に続いて、菊池凛子さんが舞台に立ち挨拶。
「英語はあまりよくわからないけれど、ワインの味はわかります。」
という言葉に、沸く会場。

ストーリーはオリジナルから、それほど大きく外れることなく進展。
でも、主軸が“ワイン・ギークとその大親友の珍旅行”でなく、
異国に住む日本人の”Fish out of water”物語なので、
オリジナルのストーリー展開をそのまま踏襲するのは、かなり辛い感じ。

それに日本版では、いくらワインの存在が二の次とはいえ、
脚本家がどれだけカリフォルニア・ワインを理解しているのか、大きな疑問。

オリジナルでは、マイルズをはじめ、マヤ、ステファニーと、
ワインに対する情熱や知識を、コミカルな会話の中で、惜しみなく披露してくれ
見ている方も、なるほどね~、と楽しくなるし、勉強にもなる。
でも日本版では、日本語の言葉遊びはあるものの、
ワインに関する知識はほとんど語られず、あっても内容は表面的で浅い。
(ピノが好き?セントラル・コーストでもいいの???)

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道雄は“ワイン好き”という設定ではあるものの、
マイルズのようなワイン・ギークには成り得ず、ワインに対する確固たる信念は皆無。
なので"I'm not drinking any fucking Merlot."のセリフも、無し。
(それとも舞台がナパだから、言えなかったの…?)

最もワインに愛情を抱いているべき役どころの麻有子は、
「アメリカで職業婦人として頑張って何が悪い!?」と、道雄にかみつくものの、
何故そこまでワインに魅せられるのか?
何故スタッグス・リープで頑張るのか?
…全然、見えてこない。

せっかくスタッグス・リープという素晴らしいワイナリーが協力してくれたのだから、
彼女に、もう少し深みのある、踏み込んだセリフを語ってもらいたかった。
そしたら観客にも(彼女が持っていると思われる)情熱やワイン知識が伝わったのに…。
彼女こそ、ワインカントリーを知らない人達に、ナパの魅力を説明できる存在なのに、
そのようなセリフは書かれなかったのが、残念至極…。

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ミナは、カフェのサーバーだけれども、同じ役柄のマヤのような
知識やこだわりは全然見えない。 (ワインカントリーで?)
また、ステファニーのように、大切に保存しておいた、
とっておきワインを、仲間と開けて楽しむ事もない。

そして、キー的な存在の大介役。
結婚を一週間に控え、ステファニーとデートするジャックを演じた
Thomas Haden Churchは、とても魅力的な演技だったから、
悪いやっちゃな~と思いつつ、どこか苦笑しながらも許せたし、
大金持ちのお嬢様フィアンセが彼に夢中なのも、すんなり受け入れられる設定だった。
でも、大介に、その魅力はない。

ジャックが、ステファニーの匂いやワイルドさに魅かれてハマったのに対し、
大介のミナへの好意は、「日本語が話せると、ほっとする」という安堵感。
まったく反対の理由。
それであのエンディングにもっていくの、厳しくない?

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また、マイルズとジャックの友情は、核となる設定だったのに、
道雄と大介である、小日向文世氏と生瀬勝久氏の間に、友情のケミカルは希薄。
マイルズとジャックは、正反対の性格だけれども、それだからこそ、
お互いにお互いを補い、必要とする、その友情が理解できた。
しかし日本版では、留学時代の一時の友人ではあるかもしれないけれど、
海を渡ってまで会いに行く親友が持つ“何か”は伝わってこなかった。

“回転と売り上げが最重要”と豪語する、レストラン経営者という設定ならば、
後半のナパで「これは!」というワインに触れさせて、
ジャックみたいにワインを楽しませてあげればいいのに…。
大介がお預けを食らうシーンはあるが、ワインを楽しむ場面は記憶に残らない。

多くのアメリカ人が、自身をジャックに重ねることが出来たのに対して、
大介は“ワインを知らない人々”を代表しない。

日本版は全編で、どこそこのワイナリーのボトル、というのは見えるけれど、
登場人物が特定のボトルについて、マイルズのように蘊蓄(うんちく)を
語るシーンは無い。葡萄品種だって、ろくろく見えないし…。
それが、ワインをタダの背景、小道具にしてしまっている、大きな要因だと思う。

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さて、いつだって面白いのは、上映後の監督との質疑応答。
特にチェリン・グラッグ監督は、コミカルな方なので、他の倍も楽しめました。

監督が描きたかったのは、”Fish out of water”(水を離れた魚/陸に上がった河童)、
日本とアメリカの狭間で、生き方を模索する人間たちのドラマ。
アメリカと日本の血を持つ、チェリン・グラッグ監督の生い立ちを見ると、
この点に焦点をあてたのは理解できる。

オリジナルには、こんなに深い思いは存在しない。(ワインは別ね)
だからカラッとしたサンタバーバラの風を感じるけれど、
日本版は、ちょっと重くて、悲しい雰囲気。

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製作費はオリジナルの5分の1しかなかったという事で、
映画中の多くの粗(あら)も、しょうがないのかな…とは思う。

ナパを選んだ理由は、日本の観客向けに、ゴールデン・ゲート・ブリッジを
盛り込む必要があり、そのためには、GGBの北に舞台を設定する必要があったとの事。
それに、ナパだったら、知名度も高いし。

でも、ナパを選んだゆえに、逆に困難も大きかったみたい。

劇中に登場する、フロッグス・リープ(Flog’s Leap)、ダリオッシュ(Darioush)、
べリンジャー(Beringer)、ニュートン(Newton)等々のワイナリー。
どんな理由から、これらのワイナリーを選んだのか?

答えはズバリ、協力して門戸を開いてくれたワイナリーが、彼らだったから。

多くのナパのワイナリーは、オリジナルSidewaysの扱いに、未だ怒っているのか、
高ビーなのか、日本を重要なマーケットとして認識していないのか、
はたまた、その全てか?
撮影に協力的ではなかったそうです。 詳しくは、Blakeのブログをご参照ください☆

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2人連れの可愛い日本人女性達から、菊池さんへの質問は
「好きなワインを教えて下さ~い♪」
上映前のあいさつで、「I understand wine.」と公言した彼女の答えは
消え入るようなはずかしげな声で「白ワイン…」。

OK、協力ワイナリー関係者も多数いることだし、具体的なブランド名は出しにくいのかな?
でも、せめて葡萄品種ぐらい言って欲しかったかも。
ヨイショするなら、“ナパのシャルドネ”とか答えれば、
ワイナリー関係者から、さらなる拍手がもらえたかもしれないのに。

あらかじめ用意されていた答えなのか、彼女自身の答えなのか?
いずれにしろ、製作スタッフ、出演者のワインに対する興味は、
それだけのレベルだったのか…と、落胆が隠せない答えではありました☆

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これはSidewaysのスチール☆

カリフォルニアのワインカントリーは、本当に美しい土地。
映画『ボトルショック』では、その美しい景色に、うっとりとしたものでしたが、
製作費の違いが、カメラワークにも影響するのでしょうか?
『サイドウェイズ』では、ナパの美しさを絵的に表現しきれていない、
もどかしさを感じました。
(野外だったから、スクリーンが悪かったの?)

期待度が大きかっただけに、「ワイン映画」としての
『サイドウェイズ』には、肩すかしを食わされてしまったような感じです。

でもね、人間模様のドラマとしてみれば、楽しい映画です☆


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by sfwinediary | 2009-09-28 13:22 | 映画