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カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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ドキュメンタリー映画 Beer Wars (ビール戦争)

ビールがワインに及ぼす影響は、超特大…
そんな事実に気づかせてくれたのが、ドキュメンタリー映画
『Beer Wars (ビール戦争)』。

ドキュメンタリー映画 Beer Wars (ビール戦争)_c0185058_7114284.jpg


アメリカには1,400以上のビール醸造所があります。
しかしながら、市場を独占しているのは、大手の2社。
最大手のAnheuser-Busch InBev社が、市場の約50%を占め、
続いてMillerCoorsが30%をコントロール。
残りの20%を、小さな醸造所が、争う形となっています。

スーパーで所狭しとばかり、棚に並ぶのは、大手会社のビールの箱。
巨大な費用を広告に投入しているだけあって、認知度は大。
なので、多くの消費者は、気軽にそれらの箱を手にとっていきます。

片や、小さな醸造所のビールは、棚の隅に、それも瓶単位で置いてあるだけなので、
目につきません。
中にはこだわりの消費者が、「オーガニック・ビール」というキャッチにつられて
手に取ることもありますが、その製造所は、大手の傘下に収まる別名の子会社…
なんてことも。

このドキュメンタリーの監督であるAnat Baron女史は、
アレルギーの為ビールを飲めません。
私自身、ビールの味が苦手なので、“小さな醸造所の造るビールが、
果たして大手の2倍の値段を出してまで、飲むに値する味なのか”どうかは、
判断できかねます。

でも、このビール大手会社が、ワインの販売にも大きな影響を及ぼしているのです。

ドキュメンタリー映画 Beer Wars (ビール戦争)_c0185058_7122578.jpg

アメリカでは、禁酒法の撤廃時に制定された法律によって、州によっては、
製造元が、ビールなりワインなりのアルコールを、
小売店に直接販売することが禁止されています。

例えばカリフォルニアでは、ワイナリーが直接、店にワインを販売できますし、
消費者がインターネットで、ワイナリーから直接購入することも可能です。
しかし、ニュージャージー州やユタ州などでは、それが出来ません。(紫色の州)
これらの州では、ディストリビュータを間に入れる必要があります。

大手のビール会社は、これらの州で、自社製品だけを扱う、
独自のディストリビュータを持っているので、
彼らが小売り店舗に及ぼす影響は、とても強大。
店舗での棚の占領率は大きく、自然と消費者の目にもつきやすくなり、
売れたもの勝ちで、市場を独占します。

一方で、地方の小規模ビール製造者の妻が、なけなしの6パック片手に、
毎晩あちこちのバーを訪れ、なんとか自社のビールを置いてもらおうと、
バーテンダー相手にセールスを展開しても、
しょせん象と闘う蟻のようなもの、とても太刀打ちはできません。

ディストリビュータが間に入ることで、消費者は高いコストを支払わされ、
製造元は利益を削らなくてはならず、
一握りの大手が、市場を独占しやすい環境が整ってしまう…。
大手会社には美味しくても、消費者や小規模製造者にとっては、
有難迷惑な制度です。

この規制を撤廃しようという、Free the Grapesのような地道な運動もあります。
しかし、ビール大企業が、政治家にお金をばらまいているために、
この法律が改正される見込みは、今のところ残念ながらありません。

ドキュメンタリー映画 Beer Wars (ビール戦争)_c0185058_714211.jpg


ワイン愛好家にとって救いなのは、ワイン市場はビール市場のように
大手2社だけに独占されてはいないこと。

一位のGalloが21%、二番手のThe Wine Groupが18%、
Constellationが15%(Almaden、Inglenook、Paul Massonといった
ブランドをThe Wine Groupに売却したため、やや縮小)。
上位10社が占めるのは、アメリカ市場の76%で、
2社が80%以上を独占するビール市場には、遠く及びません。

しかしながら、大手のビール会社が、このThree-tire制度を保持しようと試みる限り、
アメリカでのワイン販売の形態も、当分、変化は望めそうもありません。

ドキュメンタリー映画 Beer Wars (ビール戦争)_c0185058_7131493.jpg


そこで、行きつく所は『ポジティブな買い物』。

私たちが日常の生活の中で、小さな製造元の製品を、積極的に購入することが、
彼ら製造者にとって、一番のサポートになります。
これはオーガニック食品にも、言えること。
映画Food Inc.に登場したような、市場を独占する大手に太刀打ちしようと、
不買運動を試みても、大した影響は与えられません。
でも、小さな製造所にとっては、私たち消費者の日常の購入が
大きなインパクトを持っています。

自身や家族の健康のために、
そして消費者に少しでも良い製品を提供したいと頑張っている、
小規模製造者をサポートするために、
日々の買い物を、意味のあるものにしたいものです☆

このブログを書いている間に、サンフランシスコの青空をブンブンと舞っていたのは
ビールの宣伝用セスナでした☆ アイロニカルね~☆

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ドキュメンタリーは、監督がビールを飲めないので、肝心の中身(味)を語らずして、
販売制度に疑問符を投げかけるだけでは、片手落ちではないのか?
なんて事も、ちらっと頭をかすめますが、Food Inc.を楽しまれた方には、
フード・インクのアルコール版、みたいな感じで
興味深いドキュメンタリーだと思います☆

by sfwinediary | 2009-11-29 07:10 | 映画