シラーはなぜ売れないのか?
2010年 08月 07日
面白いので、訳してみました。
Why Syrah doesn’t sell: A theory and a suggestion
シラーはなぜ売れないのか:見解と提案 by W. Blake Grayです。
「カニとシラーの違いは何か?答え:カニは売れる」
と語ったのは、ボニー・デューンのRandall Grahm氏。
実際のところ、ここ数年、シラーの売れ行きは芳しくない。
これはワイン業界の人間なら周知の事実、
しかし、相変わらずワイナリーでは、せっせとシラーを造り続けている。
世には多くの素晴らしいシラーが存在しているのだが、
消費者は「カベルネはどこ?」と、シラーには目もくれないのだ。
原因として、イエローテイルが問題の元、という一般的な見方がある。
$7のシラーがあるから、消費者は$30を出してシラーを買わない…というわけ。
しかし、僕は、それは違うと思う。
何故なら、世には$2のCharles Shaw (2バック・チャック)の
カベルネやシャルドネが存在するけれども、これらが
両者の人気や値段の足をひっぱっている形跡は無いからだ。
僕の見解は、以下の通り。
ワシントン州で行われたReisling Randezvous 2010 に参加して、得たアイデアです。
L'Ecole No. 41の棚に、殆んど同じようなシラーのボトルが2種類並んでいた。
ひとつはColumbia Valley Syrah from 2007、
もうひとつはSeven Hills Vineyard Walla Walla Valley Estate Syrah from 2008。
ワイン好きならお気付きのように、後者はシングル・ヴィンヤードだ。
同じラベル、同じアルコール度(14.8%)。
誰だって似たようなワインの中身を想像するだろう?
まぁ、シングル・ヴィンヤードの方が、ちょっと複雑な風味かもしれないけどって。
ところが、この二つのワインは、まるで違う大陸で生まれたように、
まったく違ったワインだった。
コロンビア・ヴァレーの方は、リッチで熟して、ダーク・チェリーに胡椒のキャラ。
しかしワラワラ・ヴァレーの方は、ゲイミー、大地、動物的なキャラ、
まるで、フランスの北ローヌ地方のワインのようだった。
オーナー兼ワインメーカーのMartin Clubb氏は
「現在、ワラワラとコロンビアが、それぞれ違う風味を持つワインである事を、
世間に認識してもらおうと、努力しているところなんだ」と語っている。
ここで鐘が鳴った。
(実際、僕らはこの時、古い学校の建物に居たんだ)
シラーの弱点がここにある!ってね。
シラー葡萄自体に、悪いところは何もない。まったくのところ、
バロッサ・ヴァレー(豪州)では、成熟した、そしてバランスのとれた、
フルーツ爆弾のようなワインになる葡萄が、
片やコルナス(仏ローヌ)では、堅牢でセイボリー (Savoy) なワインへと
姿を変えているのは、大したものだと思う。
でも問題なのは、ワラワラ・ヴァレーの、またはソノマの、
或いはサンタ・バーバラのシラーを手にした時、
自分の手中のボトルに、どんな味が詰まっているのか?
まったく見当がつかない事なんだ。
レストランでシラーを飲む時、僕は必ず、ソムリエにどんな味か聞く。
他の葡萄品種なら、大抵の場合、アペレシオンで味の見当が付く。
例えば、ロシアンリバー・ヴァレーのシャルドネ、パソ・ロブロスのジンファンデル、
セントラル・オタゴのピノ・ノアール、大体どんな味が期待できるか予測できる。
でもシラーだと、そうは行かないからね。
かつてリースリングが、同じような問題に面した時、
生産者側は独自のルールを造り出して、みごとに問題を解決している。
甘さの指標を打ち出したんだ。
このスケールを見れば、消費者はどのくらいの甘味か、すぐ見当がつくというわけ。
シラー/シラーズの抱える問題は、リースリングと同じ質のものだと思う。
指標の表示によって、リースリングが販売を伸ばしたように、
シラーにも明るい未来はあるはず。
消費者に、セイボリーな風味なのか、またはフルーツたっぷりの風味なのかを
伝える事が出来れば、皆だってシラーに手がのばしやすいのではないだろうか。
もうひとつの提案は、呼び方について。
シラー/シラーズ (Syrah/Shiraz) は、英語では2種類の呼び名を持っている。
ピノ・グリ/ピノ・グリージオ (Pinot Gris/Pinot Grigio) も、
同じように2つの呼名があるけれど、売れ行きはなかなか好調だ。
多分これは、呼名によって期待できる風味を、売り手側と買い手側の両者が
同じように理解し、納得しているからだと思う。
ピノ・グリージオは、冷やして飲むと爽やかで、どちらかというと無害な味。
一方で、もっとスパイスの効いた、個性ある風味の場合、
製作者側では、それをピノ・グリと呼んでいる。
買う側もこの規則を知っているので、自分の好みの味を選べるわけだ。
シラー/シラーズも、同じように名前の使い分けをしたら良いんじゃないかな?
北ローヌ風味と、バロッサ・ヴァレー風味と言う、両極の例がある。
熟してフルーツ風味に富んだものを、オーストラリア風に“シラーズ”、
セイボリーな風味を“シラー”と呼べば、簡単に見分けがつく。
今、『ちょうど中間の味だったらどうするの…』って、考えたかな?
今日のワイン環境では、セイボリー風味を持つワインは稀(まれ)な存在。
ちょっとでもセイボリーだったら、シラーと呼べばいいじゃないかな。
昨今、オーストラリアのプロデューサー以外の間では、
“シラーズ”という呼び名は、ある意味汚名というか、歓迎されていないようだ。
オーストラリアのワインがワイン市場の価格崩壊を促し、イエローテイルが、
シラーズは$7の価値しかないって、人々を洗脳してしまったからだろう。
でも、現在の経済状況で大変なのは皆同じ。
恐れは克服されなければならない。
カリフォルニア州でもワシントン州でも、多くの素晴らしい
シラーズ、そしてシラーが造られている。
本当ならば、カベルネよりも、シラー(ズ)の栽培に向いている土地の方が
多いぐらいなんだが、でも、市場の流れは別方向にある。
より分かりやすい名称システムを作り上げる事で、市場を広げられないだろうか。
もしも現在“シラーズ”という名が倦厭されているならば、
トップレベルのワインが、“シラーズ”という呼名を恐れずに使うようになれば、
世間の目も変わると思うのだが。
さて、ここで僕の提案をまとめてみよう。
1.トップに立つシラー/シラーズの生産者が、業界を先卒する。
シャトー・サン・ミッシェルが、かつてリースリングでこの役を担い、成功している。
誰かボランティアはいませんか?
2.国際的なシンポジウムを開く。呼名問題をその検討課題の中心に据える。
3.指標と名称について、出来るだけ多くの生産者に賛同を求める。
もちろん、反対する人間もいるだろうけれど、勝手に吠えさせておけばいい。
いずれにしろマスコミの注目を集める事が、必要だと思う。
4.賛同者が集まったら、わかり易いキャンペーンを繰り広げる。
例えばシラーズは…。
おっと、ここから先は、顧問料が掛ります。
以上です。如何でしたか?
世には素晴らしいシラー/シラーズが、数多く存在しています。
これらを気軽に楽しめるように、まず初めの一歩として、
呼名から改革を始めようではありませんか。
以上ブレイクの記事でした。
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