カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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シラーはなぜ売れないのか?

先日ブレイクがシラーについて書いたところ、多くの反響が…。
面白いので、訳してみました。

Why Syrah doesn’t sell: A theory and a suggestion
シラーはなぜ売れないのか:見解と提案 by W. Blake Grayです。



「カニとシラーの違いは何か?答え:カニは売れる」
と語ったのは、ボニー・デューンのRandall Grahm氏。

実際のところ、ここ数年、シラーの売れ行きは芳しくない。
これはワイン業界の人間なら周知の事実、
しかし、相変わらずワイナリーでは、せっせとシラーを造り続けている。

世には多くの素晴らしいシラーが存在しているのだが、
消費者は「カベルネはどこ?」と、シラーには目もくれないのだ。

原因として、イエローテイルが問題の元、という一般的な見方がある。
$7のシラーがあるから、消費者は$30を出してシラーを買わない…というわけ。
しかし、僕は、それは違うと思う。
何故なら、世には$2のCharles Shaw (2バック・チャック)の
カベルネやシャルドネが存在するけれども、これらが
両者の人気や値段の足をひっぱっている形跡は無いからだ。

僕の見解は、以下の通り。
ワシントン州で行われたReisling Randezvous 2010 に参加して、得たアイデアです。

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L'Ecole No. 41の棚に、殆んど同じようなシラーのボトルが2種類並んでいた。
ひとつはColumbia Valley Syrah from 2007、
もうひとつはSeven Hills Vineyard Walla Walla Valley Estate Syrah from 2008。
ワイン好きならお気付きのように、後者はシングル・ヴィンヤードだ。

同じラベル、同じアルコール度(14.8%)。
誰だって似たようなワインの中身を想像するだろう?
まぁ、シングル・ヴィンヤードの方が、ちょっと複雑な風味かもしれないけどって。

ところが、この二つのワインは、まるで違う大陸で生まれたように、
まったく違ったワインだった。
コロンビア・ヴァレーの方は、リッチで熟して、ダーク・チェリーに胡椒のキャラ。
しかしワラワラ・ヴァレーの方は、ゲイミー、大地、動物的なキャラ、
まるで、フランスの北ローヌ地方のワインのようだった。

オーナー兼ワインメーカーのMartin Clubb氏は
「現在、ワラワラとコロンビアが、それぞれ違う風味を持つワインである事を、
世間に認識してもらおうと、努力しているところなんだ」と語っている。

ここで鐘が鳴った。
(実際、僕らはこの時、古い学校の建物に居たんだ)
シラーの弱点がここにある!ってね。

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シラー葡萄自体に、悪いところは何もない。まったくのところ、
バロッサ・ヴァレー(豪州)では、成熟した、そしてバランスのとれた、
フルーツ爆弾のようなワインになる葡萄が、
片やコルナス(仏ローヌ)では、堅牢でセイボリー (Savoy) なワインへと
姿を変えているのは、大したものだと思う。

でも問題なのは、ワラワラ・ヴァレーの、またはソノマの、
或いはサンタ・バーバラのシラーを手にした時、
自分の手中のボトルに、どんな味が詰まっているのか?
まったく見当がつかない事なんだ。

レストランでシラーを飲む時、僕は必ず、ソムリエにどんな味か聞く。
他の葡萄品種なら、大抵の場合、アペレシオンで味の見当が付く。
例えば、ロシアンリバー・ヴァレーのシャルドネ、パソ・ロブロスのジンファンデル、
セントラル・オタゴのピノ・ノアール、大体どんな味が期待できるか予測できる。
でもシラーだと、そうは行かないからね。

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かつてリースリングが、同じような問題に面した時、
生産者側は独自のルールを造り出して、みごとに問題を解決している。
甘さの指標を打ち出したんだ。
このスケールを見れば、消費者はどのくらいの甘味か、すぐ見当がつくというわけ。

シラー/シラーズの抱える問題は、リースリングと同じ質のものだと思う。
指標の表示によって、リースリングが販売を伸ばしたように、
シラーにも明るい未来はあるはず。
消費者に、セイボリーな風味なのか、またはフルーツたっぷりの風味なのかを
伝える事が出来れば、皆だってシラーに手がのばしやすいのではないだろうか。

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もうひとつの提案は、呼び方について。
シラー/シラーズ (Syrah/Shiraz) は、英語では2種類の呼び名を持っている。

ピノ・グリ/ピノ・グリージオ (Pinot Gris/Pinot Grigio) も、
同じように2つの呼名があるけれど、売れ行きはなかなか好調だ。
多分これは、呼名によって期待できる風味を、売り手側と買い手側の両者が
同じように理解し、納得しているからだと思う。

ピノ・グリージオは、冷やして飲むと爽やかで、どちらかというと無害な味。
一方で、もっとスパイスの効いた、個性ある風味の場合、
製作者側では、それをピノ・グリと呼んでいる。
買う側もこの規則を知っているので、自分の好みの味を選べるわけだ。

シラー/シラーズも、同じように名前の使い分けをしたら良いんじゃないかな?

北ローヌ風味と、バロッサ・ヴァレー風味と言う、両極の例がある。
熟してフルーツ風味に富んだものを、オーストラリア風に“シラーズ”、
セイボリーな風味を“シラー”と呼べば、簡単に見分けがつく。

今、『ちょうど中間の味だったらどうするの…』って、考えたかな?
今日のワイン環境では、セイボリー風味を持つワインは稀(まれ)な存在。
ちょっとでもセイボリーだったら、シラーと呼べばいいじゃないかな。

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昨今、オーストラリアのプロデューサー以外の間では、
“シラーズ”という呼び名は、ある意味汚名というか、歓迎されていないようだ。
オーストラリアのワインがワイン市場の価格崩壊を促し、イエローテイルが、
シラーズは$7の価値しかないって、人々を洗脳してしまったからだろう。

でも、現在の経済状況で大変なのは皆同じ。
恐れは克服されなければならない。
カリフォルニア州でもワシントン州でも、多くの素晴らしい
シラーズ、そしてシラーが造られている。
本当ならば、カベルネよりも、シラー(ズ)の栽培に向いている土地の方が
多いぐらいなんだが、でも、市場の流れは別方向にある。
より分かりやすい名称システムを作り上げる事で、市場を広げられないだろうか。

もしも現在“シラーズ”という名が倦厭されているならば、
トップレベルのワインが、“シラーズ”という呼名を恐れずに使うようになれば、
世間の目も変わると思うのだが。

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さて、ここで僕の提案をまとめてみよう。

1.トップに立つシラー/シラーズの生産者が、業界を先卒する。
シャトー・サン・ミッシェルが、かつてリースリングでこの役を担い、成功している。
誰かボランティアはいませんか?

2.国際的なシンポジウムを開く。呼名問題をその検討課題の中心に据える。

3.指標と名称について、出来るだけ多くの生産者に賛同を求める。
もちろん、反対する人間もいるだろうけれど、勝手に吠えさせておけばいい。
いずれにしろマスコミの注目を集める事が、必要だと思う。

4.賛同者が集まったら、わかり易いキャンペーンを繰り広げる。
例えばシラーズは…。
おっと、ここから先は、顧問料が掛ります。

以上です。如何でしたか?
世には素晴らしいシラー/シラーズが、数多く存在しています。
これらを気軽に楽しめるように、まず初めの一歩として、
呼名から改革を始めようではありませんか。

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以上ブレイクの記事でした。
オリジナルを読みたい方は、こちらからどうぞ♪

当ブログに載せている彼の記事は全て許可を取った上で訳しています。
著作権はW. Blake Grayに帰属しております。

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by sfwinediary | 2010-08-07 06:28 | ワインなお話