カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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Wrath ワインメーカー物語

アメリカ各地とイタリアに拠点を置き、大学で教鞭をとりながら、
ワインを造り、考古学の研究に勤しむという、
実に様々な顔を持つ、Wrathのワインメーカー、マイケル・トーマス氏。

先日、Wrath のソーヴィニョン・ブランと、ピノ・ノアールを
飲む機会がありました。
個性的なラベルに相応しい、個性的な味をもつワイン達。

マイケル氏の物語記事を、ブレイクがUPしたので訳してみました。
オリジナルは、The Gray Market report こちらからどうぞ♪


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『Trying to survive on the grapes of Wrath 物語』  By W. Blake Gray

ナパ・ヴァレーには『幸運な遺伝子 (lucky sperm)』という言葉がある。
素晴らしい葡萄畑やワイナリーを、遺産として受け継いだ者を指す用語だ。

この言葉は、マイケル・トーマス氏にも当てはまるだろうか?
彼の場合、義理の父親が82歳という高齢になった為に、
モントレー郡にあるワイナリーWarth とSan Saba Vineyardの経営を、
余儀なく継がされたのは、2007年の事。

当時、彼は義父のワインが好きではなかった。
なにより、カベルネ葡萄の栽培量が多すぎた。
また、先見の目を持たなかった義父の判断で、
素晴らしいテロワールだと彼が信じて疑わない自家葡萄畑は、
プレステージのアペレシオンに入る事が出来なかった。

「たったの道路1本の差で、サンタ・ルチア・ハイランドのアペレシオンから、
外れてしまったんだ。理由は、義父が周囲の人間を怒らせたからなのさ。」
と語る、トーマス氏。

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彼がワイナリーとヴィンヤードを継いだのは、43歳の折り。
ニューヨークに住居を構え、テキサスの大学で教鞭をとり、
イタリアで考古学者として活躍していた彼にとって、
カリフォルニアのモントレー郡は、少々遠い地だった。

しかしながら、こうしてワイナリーとヴィンヤードを受け継ぐ羽目になってしまった運命。
果たして、幸運と呼べるのだろうか?

「考古学者としてのキャリアは、あの時、閉ざされてしまったね。」
と語るトーマス氏だが、15年前に開始した、フローレンスの北東にある
Etruscanでの発掘は、現在もどうにか続けている。

近隣農家といっしょに葡萄畑のフェンスの修理を行い、
Byron Kosugeの手助けの元、より優れたワインを造る努力を怠らず、
フルタイムで葡萄栽培に携わる人々が、懸命に販売先を探している、この不況の中、
何とか時間を捻り出して、葡萄を買ってくれる市場を探す…。
その多忙さは、推して知るべし。

「かつてはトン当たり$2,800だったけれど、今年は$1,200で売れれば、
ラッキーだろうね。去年までは、葡萄を販売していたのだけれども、
今年は売れなかったので、バルク・ワインを造っているんだ。
優美に実ったシャルドネを、たった今(先月の話です)バルクに入れてきた所さ。

…売れると良いんだけれどね。」

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彼は現在、奥方がモントレーに移住してくれるようにと、ロビー活動中だ。
だが、彼女はNYからテキサスに移住したい考えだという。

これから先、彼は如何に3足の草鞋(わらじ)を履きこなしていくのだろうか、
率直に言わせてもらうと、かなり難しいのではないかと思う。
しかし、何層にも重なった土壌について思いを馳せる考古学者、
そしてイタリアワインの愛好家である彼は、
自家葡萄畑を熟知し、そこから最高の産物を造り出す人間として、
最適任者だと言える。

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考古学者の命名らしく、彼のワインには "Destruction Level" という
名が付いている。
これは黒い炭素の層で、彼によるとスモーキーな要素があるという。

The Wrath "Destruction Level"
Monterey Sauvignon Blanc 2008 ($29)


まろやかな口当たりだが、けっしてボディが大きすぎる事は無い。
アルコール度はたったの13.2%。
異国情緒たっぷりのパイナップル、レモングラス、そしてエスカロールの風味。
新オーク(30%)が使われているのと、普通見かけない
シャルドネを3%だけブレンドしているのが、リッチな風味の秘訣のようだ。

自家製葡萄園の葡萄を使用しているのに、ラベルには記されていない。
理由?
このワインは、本質的に同じ要素を持つ、もうひとつのバージョンがあるのだ。

Wrath San Saba Vineyard
Monterey Sauvignon Blanc 2008 ($23)


こちらは100%ステンレス製タンクで醸造され、
パイナップルの皮、レモングラス、エスカロールと、
同じキャラクターを持ちながら、口当たりがとても爽やかで、
アルコール度も幾分低い12.7%となっている。

“純粋主義者”と呼んでくれても、“ケチ”と呼んでくれてもいいんだけれど、
僕が推薦するのは、こちらのソーヴィニョン・ブランだ。

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Wrath "Fermata" Monterey Chardonnay 2008 ($40)

Fermataは停止という意味。マロラクティック醗酵を止め、
強烈なトースト、レモンの香りを残しながら、樽香が強すぎないようにしている。
リッチであるけれど、酸味を残した、
サンタ・ルチア・ハイランドらしい魅力を持つシャルドネ。

トーマス氏によると、多くの葡萄が、樹齢30年以上を経ているとの事。
通り一本を隔てているので、アペレシオン表示は出来ないけれどね…。

Wrath Doctor's Vineyard Santa Lucia Highlands Syrah 2007 ($50)

こちらは購入した葡萄から造られたシラー。
なかなかの美味で、仏ローヌのワインを彷彿とさせる。
燻製牛肉、胡椒、ブラックプラム、ラズベリー、そして大地の香りと風味。

たったの70ケースしか造られなかったのは残念だけれど、
このご時世なので、$50の値段が付くシラーを大量に作っていたら、
販売が大変だったかもしれない。

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トーマス氏は、彼の将来をなかなか現実的に見ている。
「オーストラリアが売っている、超安価なシャルドネは、
全世界のワイン市場に影響を及ぼしている。
北カリフォルニアのワイン業界の復活は、最後かもしれないな。」

しかし、少なくとも、彼は2つの安定した職を持っている。
「僕が応援するスポーツチームは、世間から最も嫌われているチームでね、
カウボーイズに、ヤンキース、そしてデューク大のバスケットボールさ。」
このデューク卒業生は、やっぱり地球上で一番ラッキーな男なのかもしれない。

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by sfwinediary | 2010-09-17 07:42 | ワインメーカーのお話