足踏みクラッシュ vs. 巨大破砕機械
2010年 11月 08日
足踏みクラッシュされた葡萄からは、大抵の場合、高価なワインが造られます。
よく言われる理由の一つは、足の裏は繊細なので、枝や種などを破壊することなく、
果実だけを上手に破砕して、果汁を取り出す事が出来るから…。
(他にも理由があるのかもしれませんが、ウラが取れていません。)
昔ながらの製法で造られたワイン、豊かなテロワールを実感できそうですよね。
で、その反極に位置するのが、巨大な葡萄果実クラッシュ・マシーン。
ワイン・ビジネス・インサイダーの記事によると、
この度、ローダイ・ヴィントナーズ(Lodi Vintners) に出現したのは、
イタリアDella Toffola Group社製の機械( thermal flash unit)。
このタイプの機械の導入は、アメリカでは2台目。
理解が正しければ、真空チェンバーの中に葡萄が入れられると、
葡萄の皮と接触した水分が、直ちに蒸発。
真空により、葡萄の皮に含まれている液胞の爆発・蒸発が起こり、
赤葡萄の色素が、瞬時にして抽出されます。
この過程で、ピラジンが水分と共に取り除かれ、故に、青臭い風味が減少します。
水分が減った分、糖分の比率は増え、結果、アルコール度は少々高くなります。
a thermal flash unit for crushing grapes
一時間に30トンの葡萄を処理できるそうです☆
ブレイク曰く、「熟した果実 + 真空機械 + 熱 + 砂糖 = ジャム」。
この機械が成すところは、
熟していない葡萄の、ベルペッパーのような青臭さを取り除く事。
現在、この機械が導入されたローダイ(Lodi)は、
“カリフォルニア”アペレシオンの、安価な価格帯の赤ワインが造られているものの、
葡萄の質は、ハイエンドのワインには、今一歩…といった地域。
あちこちから集められた、熟成度まちまちの葡萄達を、一時に大量破砕して、
大量生産ワイン用の葡萄ジュースが搾られるのは結構な事です。
でも、この機械の導入で、青臭さが抜けて、熟成、凝縮した風味に変身した、
オクタン(octane)の多い、スムースな舌触りの赤ワインが造られたらどうなるのでしょうか?
(某氏が好きなタイプで、高得点を期待できる、あの風味です)
葡萄本来の味が醸し出されたワインではなく、
人工的に造られた、ジャムのようなこってり味の赤ワインが、
高額で売りに出されたら…
あなたはそのボトルに大枚を払いますか?
ブレイクの記事はこちらからどうぞ♪
もともとは、ボルドーのように、天候不順から葡萄が熟成しない年もあるような地域の
救済策として開発されたという、この機械。
現在、ヨーロッパ、オーストラリア、南アメリカなどで、60台程使われているとの事。
でも、天候不順による葡萄の熟成の心配が、殆ど無いカリフォルニア。
フランスで言う“不作”に当たる年は、めったにありません。
それでなくても、熟成し過ぎの、ビッグでボールド(bold)過ぎる風味が多いのに、
こんな機械まで登場したら…。
ポルトガルのように、足踏みクラッシュを…なんて、
アメリカでは望みませんが、(人件費が高そう…☆)
この先、人工的な味造りはどこまで進んでいくのでしょうか。
もうひとつ、とっても人工的なワイン醸造のお話を…。
先日、ダン・バーガー氏がランチの席で語っていたのは、びっくりなお話。
あるハイエンドのワイナリーでは、ワインを醸造する過程で、
アルコール成分を一旦取り出して、樽で熟成させ、
その後、再び適度なアルコール成分をワインに戻すそうです。
1パーセント以下のアルコール分の差が、大きな味の違いとなって現れますが、
アルコール分を足したり引いたり…。
ハイテク・ワイン造り、どこまで行くのか目が離せません。
あくまでも、これはカリフォルニアのごく一部分のワイナリーの話。
私的な認識では、機械による味を整えられたワイン造りの本家は、
やぱりオーストラリアでしょう。
消費者が求めれば、それがトレンド。
この先、どのようなワインが主流を行くのでしょうか。
個人的には、無農薬栽培で育てられた葡萄から、
アルコール分や青味成分を、足したり引いたりしないで造られた、
低アルコールの、繊細な風味のワインが増えると嬉しいのですが…☆
はずれワインに出会ったら?
次への期待が膨らみますよね。
…そっか、だからワイン・漫画の設定って、幻の1本を探す旅なのかな。