カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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米国オーガニック・ワイン事情 2011

すさまじい勢いで伸びている「オーガニック」市場。
消費者にアピールしようと、皆こぞって「USDAオーガニック」の商標を掲げています。
しかしワインの世界では、少々事情が異なっています。

有機栽培された葡萄から造られたワインであっても、現在のアメリカの法律では
「USDAオーガニック・ワイン」とは表示出来ないのです。
なぜならば、殆どのワインには「サルファイト(sulfite) /亜硫酸塩」が添加されているため。
ワインを保存するためには、亜硫酸塩の存在が必要不可欠であるにもかかわらず、
一般の消費者に、その必要性が正確に理解されていない為、軋轢が起きています。

オーガニック表示と亜硫酸塩添加の有無を巡る関係を、ブレイクがわかり易く説明した、
Los Angeles Timesの記事を和訳しましたのでしましたので、お楽しみください。
オリジナル英文はこちらからどうぞ♪


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有機栽培の葡萄畑。除草剤を使用していないので、青々☆


Why isn’t more wine órganic’? -By W. Blake Gray-

よく聞く話:“オーガニック”の基準を維持しようと奮闘する消費者団体と、
何とか規制を緩めようとする企業による、闘争の図。

しかし、これが“オーガニック・ワイン”となると、話が違ってくる。
消費者団体が進めている運動が、有機栽培農業の促進を妨げているかもしれないのだ。

これはひとえに、ラベルを定める法律の不適正ゆえに生じた問題だ。
現在『USDAオーガニック』と表示出来るのは、亜硫酸塩が一切使われていないワインのみ。
しかし殆どのワイン生産者は、亜硫酸塩がワイン造りに必要不可欠だと考える。
ワインが悪くなるのを防いで、新鮮な果実風味を保ってくれるからだ。
他のオーガニック製品と違い、ワインは飲まれるまで何年も保存される可能性を持つ。
更に言えば、殆どのワインには、幾ばくかの亜硫酸塩が含まれている、
何故ならば、発酵の過程で自然に生成される成分なのだ。

その結果、近年の市場でオーガニック食品が素晴らしい伸びを示している中、
「オーガニック・ワイン」は、後手に回っている。
まず、大企業が生産に携わっていない。
そして、規制が緩いか、または正式な規制が全くない、バイオダイナミック (biodynamic)、
環境保全型ワイン (sustainable wine)、ナチュラル・ワイン (natural wine) といった、
環境に配慮したタイプのワインが、隙間を埋めながら台頭して来ている。
ワイン消費者は、健康的で環境に優しいと謳われている商品群を前にして、
一体どれを買ったらいいのか迷ってしまうし、そもそもチェック機関が皆無なので、
ワイナリーでは、“自分たちが環境に優しい”と好きなだけ謳い放題できる。

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故に、有機葡萄栽培の先駆者であるMendocino Wine Co.のポ-ル・ドラン氏を始め、
ワイン業界における環境保護者たちは、オーガニックと表示したワインにも、
亜硫酸塩の添加を認めるよう、政府に対して求めている。
ドラン氏は、この変化によって、多くの葡萄栽培者が有機栽培を進めるようになり、
結果、葡萄畑での除草剤や殺虫際の使用が減ると考える。

「もしも有機栽培のワイン葡萄を増やしたければ、亜硫酸塩の添加を
承認する必要があるんだ。」と、ドラン氏。
現在、彼の請願書の中の一通が、政府機関によって検討されている最中だ。

しかし実は彼の申し立ては、ミネソタ州に基盤を置くオーガニック消費者団体を怒らせ、
同団体は何千人もの支援者に対して、米国農務省のNational Organic Programに
この申請を受理しないよう要請する手紙を書くよう促したという経緯がある。

<なぜ亜硫酸塩が使われるのか>

闘いは1990年に始まった。
米国農務省対して、オーガニックの基準を定めるよう求める
OFPA(Organic Foods Production Act)が要請された時からだ。
殆どの食品で、防腐剤硝酸塩や亜硫酸塩などの使用が禁止された。
しかし、ワインでは自然に亜硫酸塩が生成されるため、10 ppm までの含有が認められた。
普通のワインでは、350 ppm まで許可されている。

その当時ワイン業界の殆どは、この問題を無視した。
何故なら、亜硫酸塩を添加しないワインは細菌に感染しやすく、
味も匂いも酷いものとなる可能性が高いため、
オーガニック・ワインに対する評判は悪かったからだ。

完璧な衛生状態のワイナリーで製造されたワインでも、亜硫酸塩が添加されていないと、
酸化の進み方が早く、新鮮な果実風味が急速に失われてしまう。

「亜硫酸塩は4つの異なる方法でワインを守っています。」
と語るのは、UCデイビス醸造学学科長アンディ・ウォーターハウス氏。
「たとえ1つの役割を果たす為だけであっても、代わりを探すのはとても困難です。
高品質のワインを亜硫酸塩無しで造るのは、至難の業と言えるでしょう。
葡萄に極微量のカビ菌が付着しただけで、風味がまったく損なわれてしまうのですから。」

現在、殆どのワイン生産者が、「有機栽培葡萄から造られたワイン」という
あまりぱっとしない公式カテゴリーに身を落ちつけている。

「いったいどれだけの人が、『オーガニック栽培葡萄使用ワイン』と表示された
ボトルを手にして、自分が欲しかったのはこれじゃない…と思う事だろうか。」
と語るのは、Full Glass Reserchのクリスチャン・ミラー氏。

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亜硫酸塩使用を反対する人の中には、間違った情報を根拠にしている場合があるようだ。
オーガニック消費団体の掲げる反対理由の一つに、“アレルギー問題”がある。
世の中には確かに、亜硫酸塩アレルギーの人が存在する。
しかし調査によると、殆どの人は、別の原因でアレルギー反応を起こしているのだ。

例えば、オークランド在住で、亜硫酸塩添加を認めないよう政府に手紙を書いた一人、
ヘルスケアを職業とするノーマ・ロング・スミスは「亜硫酸塩添加ワインを飲むと、
体が震えるの。でも、オーガニック・ワインだと、そんな症状は出ないのよ。」と言う。

そこで、どんなワインを飲んだら症状が出ないのか聞いたところ、彼女が挙げたのは
Bonterraの名前。有機栽培葡萄を使用したブランドでは、米国最大手だ。

ここで注目したいのは、Bonterraのワインは全て亜硫酸塩を添加しているという点。
ワインメーカーのボブ・ブルー氏に言わせると、
「ワインは酢になりたがっているんだ。酸化もしたがっている。
我々が飲んでいるのは、その途中の過程…ってわけ。
誰がわざわざ外に出て、3年も経った古いリンゴ・ジュースを飲もうと思うだろうか?」

もう一歩踏み込んで言うならば、米国農務省の全米有機プログラム
(National Organic Program)は、オーガニック認定を行う際に、
アレルギーを引き起こす可能性を考慮に入れていない。
実際に、ピーナッツ等、多くのアレルギーを引き起こす可能性を持つ食品群が、
既にオーガニックの認定を受けている。

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<異なったアプローチ方法>

年間5,000ケースを生産するCoturri Wineryと、80,000ケースを産するFrey Vineyards。
同じオーガニック・ワインの生産者ながら、この両者は消費者に対して
まったく違ったアプローチ方法をとっている。

トニー・コトゥーリ氏によると、コトゥーリ・ワイナリーでは、31年間の歴史の中で、
亜硫酸塩をいっさい使用したことがない。
そして未だに、ワイン・ラベルに「オーガニック・ワイン」の表示はしていない。

「世の中を混乱させるだけだからね。もしも、或る消費者が悪くなったワインを
買ってしまい、それがオーガニック・ワインだったら、
このカテゴリー全体が悪く言われる可能性だってあるだろう。
多くのワイナリーを、私が背負わなくてはならなくなるからね。」

一方フレイ・ヴィンヤーズでは、自分達が『USDAオーガニック・ワイン』である事を、
鳴り物入りで高く掲げて消費者に売り込んでいる。それと同時に、
オーガニック・ワインへの亜硫酸塩の使用反対運動を、率先して繰り広げている。
ホームページでは「歴史あるUSDAオーガニック・ワインの基準が攻撃されている」と
公然と謳いあげ、訪れた人々が米国農務省全米有機プログラムへの嘆願書を
手軽に送れるようにと、懇切丁寧にフォームをリンクしている。

「ワインは8,000年にわたる歴史の中で、常に自然に栽培されたオーガニック葡萄が使われ、
亜硫酸塩は添加されなかったんだ」と、ワインメーカーのポール・フレイ氏は語る。

しかし彼は、交通網が発達するまで、ワインの主な消費者は、
醸造所から数マイル以内に住んでいた事には、もちろん言及しなかった。
そして現在のワイン市場は、この限りでは無い事は明白だ。

「もしも僕のワイナリーに来て、その場で容器に詰めてほしいと言われたら、
亜硫酸塩を添加していないワインを注いであげるよ。」
と言うのは、シドゥーリのオーナー兼ワインメーカーのアダム・リー氏。
「でも、全国に出荷するんだったら、亜硫酸塩は必要だね。
まったくもって重要なんだよ。」

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以上、ブレイクのLAタイムスの記事の和訳でした。
オリジナルはこちらからご覧ください。

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by sfwinediary | 2011-01-07 03:57 | ワインの雑学