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カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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ボジョレーを訪ねて

「ボジョレーは恐らく、世界で最も商業的に過小評価されているワイン産地の一つ」
先月(2011年12月)、ボジョレーを訪れたブレイクの印象です。

ボジョレー・ヌーヴォーのお祭り騒ぎは知ってるけれど、他にどんなワインを造ってるの?
ブレイクの紀行文を和訳しましたのでお楽しみください☆
オリジナルはこちらからどうぞ♪


ボジョレーを訪ねて_c0185058_394785.jpg

Impressions of Beaujolais - by W. Blake Gray

実はこれまで僕は、ボジョレー・ワインのファンでは無かった。
理由はボジョレー愛飲家の大声にゲンナリしていたから。

往々にしてボジョレー・ファン達は、他の産地の赤ワインを指して、
「大きすぎ! オーク味が強すぎ! テロワールを反映してない!
優れた人間の為に誠実に造られたボジョレーとは違って、
無知な人間の為の小細工で造られた飲物だ!」と批判するけれど、
その行為が人々をどれだけゲンナリさせるか分かっていないようだ。
(これは、ナチュラル・ワイン支持者にも共通して言える事だろう)

ボジョレーは恐らく、世界で最も商業的に過小評価されているワイン産地の一つだろう。

これまでに何度か、なかなか良いクリュ・ボジョレーを飲んだ事があったので
12月にボジョレーに招待された時、ギリギリのスケジュールだったけれど、
呼び声に応えて僕は飛行機に飛び乗った。

帰国後、Wine Review Onlineのコラムに、ボジョレーで最も重要な人物である、
Georges DuBoeuf氏について書いたけれど、ここでは、
コラムには書けなかった、彼の地の印象について書きたいと思う。

ボジョレーを訪ねて_c0185058_2482589.jpg


ボジョレーでは誰もが、それぞれ自分のワインがどんなに隣人と違っているか語ってくれる。
いわゆるテロワールの違いだ。それは間違ってはいない。
でも、(よそ者の目から見ると)彼らはとても良く似ている。
誰が造ったワインを飲んでもボジョレーの味。そしてそれがボジョレーのテロワールなのだろう。

では、何を持ってボジョレーの味と呼ぶか?

このブログを読まれる方は、既に答えをご存じだろう。
でも皆さんは、ボジョレーがいったいどんな場所かご存じだろうか?

何にも無い所。
殆どの住人は職を求めて大都市に行ってしまった…、と言う感じの田舎さびた土地だ。
もちろん秋の収穫時は別だろうけれど、12月ときたら。

ボジョレー地方の二つの街でそれぞれ夕食を食べる機会があったのだけれど、
いずれの場合もレストランの客は僕と連れだけだった。
ホテルもしかり、宿泊客は僕だけ。
行きかう車はまれで、通りを歩いている人間は皆無。
滞在した4日間、この人気(ひとけ)の無さはなんとも説明できないものだった。
まぁ、僕は街の経済状況を取材しに行ったのでは無いしね。
言える事は、静かな冬のバケーションをお望みの方、ボジョレーは狙い目です。

ここでの買い物はとても不便なので要注意。幾つかの街には店が全く無い有様。
僕らは水を買う為に、唯一の店がある街まで車を走らせなければならなかった。
それも店の開いている時間は限られているときている。

ブルゴーニュから北へかけての土地と違って、
道路脇に広大な葡萄園が続くといった風景は見あたらない。
(はい、ボジョレーは法的にブルゴーニュの一部だと存じております)
葡萄は単作で栽培されているのではなく、他の農作物と共存している。
恐らく、ここの葡萄はそれほど高価では売れないからなのだろうか。

多くは棚になっておらず、冬の只中に佇む葡萄の木は、ずんぐりと古く見えた。
これがシャトーからシャトーへと移動する車の中からの印象。

ボジョレーを訪ねて_c0185058_2474577.jpg


さて、ワインの味についてはどうだろう。
まず果実風味だが、大抵の場合、赤プラム。
かなり熟成したワインでは黒プラム、未成熟のものでは赤カーラントの風味を感じる。
しかし決して「フルーツてんこ盛り」といったテイスティングノートにはならない。

ボディは、北部ブルゴーニュで言えば中程度、その他の地域に比べたら軽い。

殆ど全てに酸味がある。
どこかで読んだのだけれど、消費者にとって酸味(tangy acidity)は、残念ながら
マイナスなイメージらしい。トップのボジョレーでも$20以下でしか売れない訳だ。

全体的に、風味は新鮮な感じ。
中には花の香りのするワインもあるし、強烈なミネラル風味を持つものもある。
しかし基本的に、赤プラム・軽いボディ・酸味、この三キャラは共通している。

ノックアウトされるようなボジョレー・ワインにあう確率は稀だ。
その為に、100点方式で採点するのは難しい。
大抵の場合、気にもとめないで素通りしてしまうだろう。
テイスティングには向かないし、「ワォ!」と思われるワインで無い事は確かだ。

主流マーケットでボジョレーを販売する為に、彼らは消費者に対して
ちょっと捻ったアプローチをしなければならない。
例えば前に「ボジョレーは冷やして飲もう。(Beaujolais: Licensed to Chill)」
という広告用CDが送られてきた事がある。
もちろんフランスで、冷やしたボジョレーが出された事は無かった。
未成熟なワインを販売する為のヌーヴォー広告を目にされた方も多いだろう。
また、100点評価反対派による特別なキャンペーンでは、クリュ・ボジョレーが、
何でもかんでもカベルネと比べて評価されるシステムでは低得点しか得られない
典型的な例として、しばしば登場する。

思うに、ボジョレーのセールスポイントは、セールスマンには説明できない所にある。
何ものにも超越しないけれど、どんなものとも調和できるワイン、それがボジョレーだ。
白身魚、グリーンサラダ、普段なら白ワインと合わせる料理も、
ボジョレーなら赤で楽しめる。

ボジョレーを訪ねて_c0185058_2501560.jpg


さて、このボジョレーの僕に対する影響は、思いもよらなかった所で現れた。
ボジョレー旅行からの帰り、僕は自由な1日を過ごすため、電車でパリへと向かった。
車窓を眺めながら、せっかくフランスに居るのだから、夕食には素晴らしい赤ワイン、
ボディがあって、色が濃くて、深い風味のワインを飲みたいものだと考えていた。

で、何を飲んだかって?
Morgan(ボジョレーの一地方)、それも2食続けて。
ソムリエから勧められたのと、僕が食べていた料理が理由だった。
バスク地方の料理、それも魚から肉料理、野菜へ移ってまた肉へ…という
マルチコースを食べたからなんだけれどね。
それとも、この時すでに僕自身がボジョレーに順応していたのかなぁ。

そしてサンフランシスコに戻ってからも、ビッグなカリフォルニアワインに
正面から向かう気にはなれず、帰宅一日目は、まずスパークリングワインを開けた。
そしてしばらくの間はカクテルを飲んでいた。
そう、もう一度ビッグなワインの世界に戻っていく為に、移行期間を必要としたんだ。

さて、僕は後日、コラム用のテイスティングノートを仕上げる為に、
フランスで試飲したDuBoeufの最高クラスのクリュの値段を調べていた。
現場に居た時には、いったいそれらのワインが幾らぐらいするのか知らなかったけれど、
最高のワインとしてライターに饗されるのだから、$35は下らないかな…と推測していた。
結果は…全て$20以下という値段。

遂に、ボジョレーは僕に「ワォ!」と言わしめてくれた。

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「何ものにも超越しないけれど、どんなものとも調和できるワイン、それがボジョレー。」
以上ブレイクのブログ記事でした。
オリジナルを楽しみたい方は、こちらからどうぞ☆


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by sfwinediary | 2012-01-28 03:17 | ワインなお話