カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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カテゴリ:ワインなお話( 25 )

今年創立154周年を迎えたグンラック・ブンシュ(Gundlach Bundschu)は、
カリフォルニアで2番目に古いワイナリー。
未だにファミリービジネスの形態を保つ数少ないワイナリーの一つです。

彼らがお披露目したプロモビデオ「或るメルローの歴史」が面白いのでご覧ください。

人気のカベルネの傍らで、それでも必死に頑張っている健気なメルロー。
「そうそう、メルローってこんな感じだよね」って、笑える事間違いなしです☆

A Brief History of Merlot




<物語> 英語の字幕がイマイチ読み切れなかった方に解説

その昔、葡萄5兄弟が、ボルドーからカリフォルニアの地にやってきました。

大兄貴のカベルネ・ソーヴィニョン、片腕役のスムースな弟メルロー、
芸術家肌のカベルネ・フラン、縁の下の力持ちプチ・ヴェルド、
やがては自分探しの為に南アフリカに旅立つ小さな弟マルベック。

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70年代になると、カベルネ・ソーヴィニョンとメルロー兄弟は、
カリフォルニアのパイオニア的葡萄として、脚光を浴びるようになります。
でも皆の注目を集めるのは、もっぱら大兄貴のカベルネ・ソーヴィニョン。
メルローはどうしても兄貴の背中に隠れがちでした。

そんな中、80年代になるとメルローは独立を果たします。
そして徐々に自力でスターへの道を歩き始めます。

90年グランジ時代、遂にメルローは、兄貴を抜いて一躍大人気者になります。

しかし、人気ゆえにカリフォルニア中で栽培された結果、
メルローは次第にソフトで締りの無い味になってしまいます。

そこへ追い打ちをかけるように登場したのは、映画『サイドウェイ』。
川岸で日陰暮らしを強いられていた、いとこのピノノアールは、
一夜にしてマスコミの寵児。
片や、太りまくったメルローは皆の嘲笑の的に…。

けれども、メルローは彼のMojo(底力)を失くしてはいませんでした。

一旦は故郷を離れたメルローですが、再び在るべき場所に戻り、日々鍛錬した結果、
見事にパワー、バランス、集中力を取り戻したのです。
メルローが一番幸せな場所、彼を理解してくれる人々に囲まれて、
メルローは再び前進し始めました。
それが、グンラック・ブンシュのメルローです。

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…という、プロモーション・ビデオ。
本当に美味しいメルローは、スムースで、幅広い料理に合う万能選手。
カリフォルニアのメルローには、是非、益々精進して美味しくなってほしいものです。

ちなみに、演じていたのはブンシュ・ファミリー。
カベルネ・ソーヴィニョン役は葡萄栽培ディレクターのジム・ブンシュ氏、
メルロー役は社長のジェフ・グンラック・ブンシュ氏。
芸術家肌のカベルネ・フラン役はワインメーカーのキース・エマーソン氏、等々。
楽しさ倍増です☆

昔のブンシュ記事はこちらをどうぞ☆
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by sfwinediary | 2012-03-15 07:18 | ワインなお話
Concours Mondial de Brazil(ブリュッセル国際ワインコンクール-ブラジル)の
審査員として、2011年秋、ブラジルに招かれたブレイク。
2本のブラジルワインにまつわる、旅先での忍者クエストの様子を綴っています。
お楽しみください☆ オリジナル英文はこちらからどうぞ♪


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羊たちの後ろに広がるのは葡萄園☆ Blakeが撮ったお気に入りの一枚です

My ninja quest for two great wines from Brazil - By W. Blake Gray

と或るパーティ会場。
僕は一所懸命にワインボトルの山をかき分けていた。

周りに響くのは、ワイングラスの触れ合う音。
聞こえてくるのは、フランス語、ポルトガル語、スペイン語で談笑する人々のざわめき。
しかしそんな中で僕は一人、顔をしかめながら、只ひたすら、次から次へと
ボトルを持ち上げては下ろし、持ち上げては下ろす…という行為に専念していた。

何故って?
コンクールで試飲したワインの中で、2番目に美味しいと思ったワインを探していたんだ。

欧州をリードするブリュッセル国際ワインコンクールの一環である、
Concours Mondial de Brazilの審査員として、僕はブラジルを訪れていた。
審査はブラインド形式で行われ、審査後のパーティでも結果は未だ発表されていなかった。

僕が審査中に気に入ったワインは2本、カベルネ・フランとヴィオニエ。
しかしブラインドだったので、その時点で分かっていたのは葡萄の品種のみ。
お気に入りの2本を探し出そうと、僕は頑張っていたってわけ。

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カベルネ・フランは簡単だった。
審査したカベルネ・フランは3種類のみ、その内2009年ヴィンテージは1種だけ。
それさえ判れば、後は楽勝。3つの大テーブルに所狭しと並ぶ300本以上のボトルの中から、
お目当ての1本を探すだけだ。
例えボトルが空になっていようと、どのワイナリーの手によるものかすぐ判る。

問題は2010年のヴィオニエだった。この条件に合うのは3本。
実際に味を確かめないと、どの1本だったのか永遠に分からなくなってしまう。

おまけにこれらの3本は、人々が盛んに手を伸ばしているテーブルに置かれているらしい。
もしも誰かがこのボトルを発見したならば、忽ち人の手から手に渡り、
あっという間に空になってしまうに違いない。

皆さんは、プロのワイン飲み達が、優れたワインに手を伸ばす有様を
ご覧になった事があるだろうか?
それはまるでパタネグラ豚に食らいつく、ピラニアとでも形容しようか、
「う~ん、美味しいね。あれ?もう空っぽなの?」という感じ。
そしてこの会場は、プロのワイン飲み達で溢れているときている…。
僕は焦った。

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さて、その時の僕は、あるアドバンテージを握っていた。
全てのワインボトルは、必ずしも開栓されてはいなかった。というのも、
パーティ主催者は、会場に未開封のボトルを運び込んだばかりだったのだ。
そして多くのソムリエ資格者達が丸腰の中、僕はコークスクリューを持参していた。
そもそもこのパーティに出席したのは、この2本のワインを探すのが目的だったので、
あらかじめ“コルク抜き”で武装していった…というわけ。

20分程ワインの山と格闘した時点で、2010年のヴィオニエを2本探し出していた。
両方とも未開栓だった。
ボトルを鷲掴みにするや否や、僕はこっそり人気のない片隅に持って行き、
期待しながら栓を開けた。しかし、すぐに違うと分かった。
どちらも僕の追い求める1本では無かった。

ちょうど2本目を試飲していた時、一人のフランス人審査員が「何飲んでるんだい?」
と聞いてきた。僕のフランス語に対する認識では、彼は、『パーティの最中、
こんな片隅に隠れて、いったい何やってるんじゃい?』と問いたかったのだろう。
あくまでも推測だけど、そう事実と遠くないと思うな。

幻のヴィオニエを求めて、僕はテーブルからテーブルをさまよい続けた。
何度も何度もチェックした。でも、何処にも見つからない…。

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しかし、遂に夜明けは訪れた!
テーブルの上に無いので、人々が談笑しながら手にしているボトルに目を凝らした所…
あったーーーー-!
そのボトルは、ある審査員の手に握られていた。

僕は高級レストランの給仕よろしく、彼の後ろにピッタリとついた。
ヨガのマウンテン・ポーズで立ち、次にどんなアクションでもとれるよう準備した。
・・・。
審査員がちょっとだけボトルをテーブルに下ろしたその瞬間、
僕はボトルをすくい上げ、まるで忍者の様にその場から姿をくらました。

ワインの名はCampos de Cima Da Serra RAR Collezione Viognier 2010
ブラジルでは、25レアル(約US$14)で売られている。

僕は大好きだったのだけれど、コンクールでは銀メダルだった。
製造者はMiolo wine group、ブラジルでも最大級規模のワイナリーの一つ。
でも何よりもこのワインで興味深いのは、ヴィンヤードだろう。

この葡萄は、ブラジルでもっとも成功した起業家でありワイン愛好家の
Raul A. Randon氏が植えた畑で収穫された。
ブラジルで世界クラスのワインを造ろうと思ったら、
そう、一から、葡萄の栽培から始めなけらばならないのだ。

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「世界クラスのワインを造るのは、ラウール・ランドン氏の夢でした」と語るのは
Mioloのワイン醸造家Daniel Alonso氏。
ランドン氏はブラジル南西部にある、雨が少なく乾燥していて、夏暑く、
昼夜の寒暖差が激しい、標高1000メートルの遠方地に葡萄園を切り開いた。

「ブラジルの葡萄栽培では雨が問題となります。葡萄園は250キロも遠方にありますが、
彼の地は特別なのです。」とアロンゾ氏。

ワインは12カ月間フレンチオークで醗酵されるが、樽味はごく上品に現われている。
好ましい新鮮なドライアップル風味と、フローラルな香りを持つ。
口当たりは芳醇だが、酸味が心地よい後味を残してくれる。
アルコール度は13度。世界クラスのワインで、評価は91点といった所だろうか。
この味で24レアル(約1100日本円)は買い得だろう。
僕が見る所、多分このワインで利益は出ていないんじゃないかな。
でも、彼の夢、世界クラスのワインを醸造するという点では成功したのだから
ランドン氏としては、善しとする所だろう。

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もう1本の、僕が一番好きだったワインは金メダルをとった。
親愛なる審査員の皆さんも僕と同じ意見だったんだね。

Pequenas Partilhas Serra Gaúcha Cabernet Franc 2009は、素晴らしい
ジューシーなカベルネ・フラン。ダークなプラム、ダーク・チョコとハーブの香り。
酸味が豊富でバランスのとれたワイン。
ブラジルで最大のAuroraが1200ケース造ったので、比較的見つけ易いはずだ。
残念ながらAurora関係者と話す機会が無かったので、語るべき背景物語は無い。
まぁ恐らく、再び飲める機会も当分は無いだろうしね。

いずれにしろ、ブラジルワインの将来の可能性を考える時、
僕はこの2種類のワインを忘れる事は無いだろう。

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以上、ブレイクの記事の和訳でした。
オリジナルはこちらからお楽しみください☆


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by sfwinediary | 2012-02-01 09:54 | ワインなお話

ボジョレーを訪ねて

「ボジョレーは恐らく、世界で最も商業的に過小評価されているワイン産地の一つ」
先月(2011年12月)、ボジョレーを訪れたブレイクの印象です。

ボジョレー・ヌーヴォーのお祭り騒ぎは知ってるけれど、他にどんなワインを造ってるの?
ブレイクの紀行文を和訳しましたのでお楽しみください☆
オリジナルはこちらからどうぞ♪


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Impressions of Beaujolais - by W. Blake Gray

実はこれまで僕は、ボジョレー・ワインのファンでは無かった。
理由はボジョレー愛飲家の大声にゲンナリしていたから。

往々にしてボジョレー・ファン達は、他の産地の赤ワインを指して、
「大きすぎ! オーク味が強すぎ! テロワールを反映してない!
優れた人間の為に誠実に造られたボジョレーとは違って、
無知な人間の為の小細工で造られた飲物だ!」と批判するけれど、
その行為が人々をどれだけゲンナリさせるか分かっていないようだ。
(これは、ナチュラル・ワイン支持者にも共通して言える事だろう)

ボジョレーは恐らく、世界で最も商業的に過小評価されているワイン産地の一つだろう。

これまでに何度か、なかなか良いクリュ・ボジョレーを飲んだ事があったので
12月にボジョレーに招待された時、ギリギリのスケジュールだったけれど、
呼び声に応えて僕は飛行機に飛び乗った。

帰国後、Wine Review Onlineのコラムに、ボジョレーで最も重要な人物である、
Georges DuBoeuf氏について書いたけれど、ここでは、
コラムには書けなかった、彼の地の印象について書きたいと思う。

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ボジョレーでは誰もが、それぞれ自分のワインがどんなに隣人と違っているか語ってくれる。
いわゆるテロワールの違いだ。それは間違ってはいない。
でも、(よそ者の目から見ると)彼らはとても良く似ている。
誰が造ったワインを飲んでもボジョレーの味。そしてそれがボジョレーのテロワールなのだろう。

では、何を持ってボジョレーの味と呼ぶか?

このブログを読まれる方は、既に答えをご存じだろう。
でも皆さんは、ボジョレーがいったいどんな場所かご存じだろうか?

何にも無い所。
殆どの住人は職を求めて大都市に行ってしまった…、と言う感じの田舎さびた土地だ。
もちろん秋の収穫時は別だろうけれど、12月ときたら。

ボジョレー地方の二つの街でそれぞれ夕食を食べる機会があったのだけれど、
いずれの場合もレストランの客は僕と連れだけだった。
ホテルもしかり、宿泊客は僕だけ。
行きかう車はまれで、通りを歩いている人間は皆無。
滞在した4日間、この人気(ひとけ)の無さはなんとも説明できないものだった。
まぁ、僕は街の経済状況を取材しに行ったのでは無いしね。
言える事は、静かな冬のバケーションをお望みの方、ボジョレーは狙い目です。

ここでの買い物はとても不便なので要注意。幾つかの街には店が全く無い有様。
僕らは水を買う為に、唯一の店がある街まで車を走らせなければならなかった。
それも店の開いている時間は限られているときている。

ブルゴーニュから北へかけての土地と違って、
道路脇に広大な葡萄園が続くといった風景は見あたらない。
(はい、ボジョレーは法的にブルゴーニュの一部だと存じております)
葡萄は単作で栽培されているのではなく、他の農作物と共存している。
恐らく、ここの葡萄はそれほど高価では売れないからなのだろうか。

多くは棚になっておらず、冬の只中に佇む葡萄の木は、ずんぐりと古く見えた。
これがシャトーからシャトーへと移動する車の中からの印象。

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さて、ワインの味についてはどうだろう。
まず果実風味だが、大抵の場合、赤プラム。
かなり熟成したワインでは黒プラム、未成熟のものでは赤カーラントの風味を感じる。
しかし決して「フルーツてんこ盛り」といったテイスティングノートにはならない。

ボディは、北部ブルゴーニュで言えば中程度、その他の地域に比べたら軽い。

殆ど全てに酸味がある。
どこかで読んだのだけれど、消費者にとって酸味(tangy acidity)は、残念ながら
マイナスなイメージらしい。トップのボジョレーでも$20以下でしか売れない訳だ。

全体的に、風味は新鮮な感じ。
中には花の香りのするワインもあるし、強烈なミネラル風味を持つものもある。
しかし基本的に、赤プラム・軽いボディ・酸味、この三キャラは共通している。

ノックアウトされるようなボジョレー・ワインにあう確率は稀だ。
その為に、100点方式で採点するのは難しい。
大抵の場合、気にもとめないで素通りしてしまうだろう。
テイスティングには向かないし、「ワォ!」と思われるワインで無い事は確かだ。

主流マーケットでボジョレーを販売する為に、彼らは消費者に対して
ちょっと捻ったアプローチをしなければならない。
例えば前に「ボジョレーは冷やして飲もう。(Beaujolais: Licensed to Chill)」
という広告用CDが送られてきた事がある。
もちろんフランスで、冷やしたボジョレーが出された事は無かった。
未成熟なワインを販売する為のヌーヴォー広告を目にされた方も多いだろう。
また、100点評価反対派による特別なキャンペーンでは、クリュ・ボジョレーが、
何でもかんでもカベルネと比べて評価されるシステムでは低得点しか得られない
典型的な例として、しばしば登場する。

思うに、ボジョレーのセールスポイントは、セールスマンには説明できない所にある。
何ものにも超越しないけれど、どんなものとも調和できるワイン、それがボジョレーだ。
白身魚、グリーンサラダ、普段なら白ワインと合わせる料理も、
ボジョレーなら赤で楽しめる。

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さて、このボジョレーの僕に対する影響は、思いもよらなかった所で現れた。
ボジョレー旅行からの帰り、僕は自由な1日を過ごすため、電車でパリへと向かった。
車窓を眺めながら、せっかくフランスに居るのだから、夕食には素晴らしい赤ワイン、
ボディがあって、色が濃くて、深い風味のワインを飲みたいものだと考えていた。

で、何を飲んだかって?
Morgan(ボジョレーの一地方)、それも2食続けて。
ソムリエから勧められたのと、僕が食べていた料理が理由だった。
バスク地方の料理、それも魚から肉料理、野菜へ移ってまた肉へ…という
マルチコースを食べたからなんだけれどね。
それとも、この時すでに僕自身がボジョレーに順応していたのかなぁ。

そしてサンフランシスコに戻ってからも、ビッグなカリフォルニアワインに
正面から向かう気にはなれず、帰宅一日目は、まずスパークリングワインを開けた。
そしてしばらくの間はカクテルを飲んでいた。
そう、もう一度ビッグなワインの世界に戻っていく為に、移行期間を必要としたんだ。

さて、僕は後日、コラム用のテイスティングノートを仕上げる為に、
フランスで試飲したDuBoeufの最高クラスのクリュの値段を調べていた。
現場に居た時には、いったいそれらのワインが幾らぐらいするのか知らなかったけれど、
最高のワインとしてライターに饗されるのだから、$35は下らないかな…と推測していた。
結果は…全て$20以下という値段。

遂に、ボジョレーは僕に「ワォ!」と言わしめてくれた。

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「何ものにも超越しないけれど、どんなものとも調和できるワイン、それがボジョレー。」
以上ブレイクのブログ記事でした。
オリジナルを楽しみたい方は、こちらからどうぞ☆


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by sfwinediary | 2012-01-28 03:17 | ワインなお話
とある夕方の事。突然、奇声を挙げたブレイク。
すわ一大事かと慌てて駆けつけた所、ボタンを押し間違えて、
ブログにアップしようといていた記事を削除してしまったそうな。
一月前に書いたものなので、インタビューやテイスティング・ノートを記したメモ帳は
すでにゴミ箱の藻屑と消えて久しく、新たに書き直す手段は無かった。

それはカルトワイン愛好家達に評されるタイプのワインで、彼の好みでは無かった為、
どうしても肯定的には書けず、どのようなアングルからアプローチすればいいのか、
ずっと悩んで試行錯誤していた記事だった。

日本ではプロの書いた否定的な見解のレビューというのは殆ど目にしない。
悪い点を露わにしない、奥ゆかしい文化のせいだろうけれど、
え~~、こんな映画に高得点?ってな、太鼓持ちレビューが多い気がする。結果、
記事につられて映画を見たのは良いものの、お金と時間の無駄だった…なんて事に。

所変わってアメリカでは、映画やTV番組、音楽等、プロの評論家達を
唸らせるハードルはなかなか高くて、世の中にはかなり辛辣な評価が横行している。
しかしそんな中で、ワイン・メディア業界は別のようだ。
太鼓持ち記事は書かない、という姿勢ではあるものの、
個別のワインやワイナリーに関する否定的な記事を目にする事は、あまりない。
いったい何故か?

ブレイクが語るワインライターの本音です☆


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Why nobody writes bad things about wine – By W. Blake Gray

ある土曜日の事だった。
僕は不覚にもボタンを押し間違えてしまい、保存してあった某ワインメーカーの
インタビューとテイスティング・ノートの長い記事を削除してしまった。
一月前に書いたもので、殆どのワインは(僕にとっては)飲める代物では無い…
といった内容だった。
後に、このワイナリーの産品がカルトワインとして話題に上ったのを知り、
トゥイートした所、他のライター達からワイナリー名を教えて欲しいとの要請が来た。

もちろんその名前を公表するつもりはない。
ワインメーカーとの仲もあるけれど、第一の理由はワイン業界全体との関係ゆえ。
そしてこれが、プロフェッショナルなライターが書いた否定的なワイン記事を
ごく稀にしか皆さんが目にしない理由だ。

これは今日のワイン・メディア業界の暗部と言えるだろう。
僕はワインの記事を書き、売っている。
そしてその事実が僕をプロのライターとしている。
もしも僕が他に職を持っていて、それが退職の日まで保証された堅固なものならば、
理論上は、悪いワインに関する誠実な記事をもっと書けるはずだ。
しかし嘗てその状況に最も近い、新聞社のワイン評論家という職についていた時でさえ、
会社のポリシーは「良いと思ったワインだけを記事にする」という姿勢だった。

今日、どれだけの評論家が否定的なレビューを書いているだろうか?
ワイン・スペクテーター誌のJames Laube氏が、たまさか80点台を付けるけれど、
彼は自信に満ちた揺るぎない地位についている。
自ら会社を経営するJancis Robinson女史は、高値の付いたボルドーを
「とんでもないワイン」と呼んでいるが、パーカー氏に反論する手段として
そうしているように見受けられる。

否定的な記事を書ける立場としては、パーカー氏が一番だろう。
自ら会社を運営し、自前でワインを買い、業界に尊敬され、恐れられてもいる。
おまけに弁護士だから言論の自由についてはお手のものときている。
しかし彼でさえもワイン・アドヴォケイトに否定的なレビューを載せなくなって久しい。

何故なのか?

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僕は物事を恐れないタイプだし、パーカー氏もそうだろう。
では何故、肯定的な記事しか世に出ないのか。
そもそも我々がワインライターになったのは、自ら強固な意見を持っているからだ。
多くのパネルディスカッションの席で同業の輩が、今し方試飲たばかりの
まずいワインを、散々にこきおろすのを目にしてきた。
でも公の席で同じ意見を口にするものは誰もいない。

それには3つの理由がある。2つは寛大さから、1つは臆病さから。

理由1)哲学
自分個人の味覚は、決して全員の味覚と同じものではない…
という事を、評論家たちは良く自覚している。

僕はもう何年にもわたって、自分の好みでは無いワインをパーティの度に提供してきた。
念の為に一口試して、やっぱりこの味は自分の好みでは無いと確信するのだけれど、
「普通の人々」はワインの味についてあまり深く考えずに口にしているようだし、
中にはさも美味しそうにそれを飲んでいる人もいる。

理由2)礼儀と尊敬の念
ワインを悪しざまに言う時、それは映画やブロードウェイ劇、あるいは車といった、
大勢の手によって出来あがった製品を非難するのとは違うのだという事実。
相手が大規模ワイナリーの場合でさえも、ワインメーカー個人を、
あえて言えばヴィンヤード・マネージャーを非難している事になる。

例え僕が、熟成し過ぎで酸味に乏しいワインを造るプロデューサーに対して、
製造を止めさせる権限を持っていたとしても、そんな事は決してしないだろう。
僕の好みでないワインを造る事は、不正行為でも何でもないのだから。
ワイナリーは一生懸命に生計を立てようとしているのだし、
もしも君が少しでもこの業界に身を置いたならば、
ワイン造りがどんなに不安定なビジネスかが良く解るだろう。

理由3)自己利益
もしも僕が映画やTV番組の評論家のように、痛烈なレビューを書いたならば、
ワイナリーは僕を恐れて、インタビューはもちろんの事、
サンプルだって送ってはくれなくなるだろう。
ワインメーカーが僕の電話に出てくれなかったら?記事が書けなくなるよね。

嘘だと思う?
昔、僕がナパの或る大規模ワイナリーのワインを賞賛する記事を書いた所、ワイナリーの
お気に召さなかったようで、彼らは数か月にわたり僕の悪評を撒き散らしてくれた。
気に入られないからと言って、自分の書いた物を取り下げる気は一切無いけれど、
やり難かったことは確かだった。

個人的なレベルだけでなく、僕がかつて席を置いた新聞社のような大手でさえも、
否定的なレビューを載せないのには理由がある。
仕事が困難になるだけだからだ。

どうせ、タダ飯やワイン、視察旅行に懐柔されたんだろう…と、君は思うかもしれない。
ロバート・パーカー氏は、これらを一切受け付けないけれど、
でも基本的なポリシーは僕と一緒だ。

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長くなったけれど、そういう訳で僕は某カルトワイナリーの名を公表しない。
ワインメーカーが好きだし、彼の物語は面白い。
そしてパーカー氏は、彼のワインが大好きだ。
(それがそもそも彼の記事を書こうと思った理由の一つだったんだけどね)
まぁ僕の存在は、Monktonのマンモスに比べたら蚊のように小さいけれど、
ともかくも彼のビジネスの妨げになる事は心配せずに済むわけだ。

まてよ、パーカーとジャンシスの闘いがシャトー・パヴィ(Chateau Pavie)の
売り上げを伸ばしたように、逆に世間の興味を掻き立てる事で
ビジネスの手助けが出来るかもしれないね。

安全性や巨額の金が直結する、車の評論家や株のアナリスト達と違って、
僕は読者達に向かって、これこれのワインは絶対に飲まないで下さい…
なんて忠告しようとは思わない。
某ワイナリーの人気急上昇ぶりを、ファン達のコメントから学んだ次第だし、
君だって彼らの一人となるかもしれない。
そうしたら、僕が否定的な評価を下す事で、君の喜びに水を差すことになるだろう。
人々からワインを飲む楽しみを奪うなんて酷い事を、いったい誰が出来ようか?

僕が好きではないワインは確かに存在する、でもこれから先、
好きなワインの事だけ話すようにしよう。

Bollinger Champagne? 素晴らしいよね。
Herman J. Wiemer Gewurztraminer? 傑作だよね。
Ravenswood single-vineyard Zinfandel? 卓越している。

この世の中には、語るべき素晴らしいワインがいっぱいあるからね。

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以上、ブレイクの記事でした。
オリジナルはこちらからどうぞ♪

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by sfwinediary | 2011-11-02 07:44 | ワインなお話
10月第一週は、夫君ブレイクの誕生日。
彼がこの世に生れた事を天に感謝して、友人らとフロリダに集結して祝う予定です。

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Clearwater Beach, FL

で、お祝いに欠かせないのがバブリー(スパークリング・ワイン)。

大抵の場合、“良いなと思えるスパークリング・ワイン”は、
“良いなと思えるスティル・ワイン”よりも値が張ります。
何故なら、タンクや樽で醗酵させた後に、再びボトルで醗酵する必要があり、
普通のワインよりも、製造過程で手間暇がかかるから。

スティル・ワインだったら飲むに足りるワインが、安い所では$2から並んでいますが、
バブリーではそうはいきません。

だったら幾ら出せばいいの?と思われますよね。
安価な製法、大まかに言えば、ソーダを造るように炭酸二次発酵が行われる
プロセッコ(Prosecco)ならば$10ほど、
その他ならば、最低$15は払う覚悟が必要。

「美味しいスパークリング・ワインは飲んだ事が無い。嫌いだ。」と仰る方、
もしかしたら、これまで安いバブリーしか試していませんか?
本当に美味しいバブリーは、グラス一杯で、人生をより楽しいものにしてくれるはず。

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カバ(Cava)より、プロセッコより、やっぱり飲むならシャンパン。
三者が並んでいたら、我が家ならば、迷わずシャンパンに手を伸ばします。

そしてアメリカ産のバブリーで選ぶならばこちらの面々がお勧め☆

Argyle
Domaine Carneros
Gloria Ferrer
Gruet
J
Roederer
Scharffenberger
Schramsberg

今回のフロリダへも、とっておきボトルを何本か持って行く予定。
Clearwater Beachを拠点に、連日のワイン浸りとなる予感です。

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フロリダ食べ歩き、飲み歩き日記は、帰ってきたらUPします☆
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by sfwinediary | 2011-10-02 08:30 | ワインなお話

魅惑のマディラ酒

16世紀から19世紀にかけて、マディラ酒は北アメリカで
とてもポピュラーなワインでした。
理由はその不滅性。

飛行機の無かった昔、熱~い貨物船のコンテナに長時間積まれていても、
品質を損ねるどころか、風味はますます円熟し、
世界を2周もしたマディラ酒には、かえって高値がついたほどでした。

200年たった今も、マディラ酒の素晴らしさは少しも損なわれていません。

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ポルトガルの小さな島、マディラ島で出来る葡萄は、酸味が豊富。
この島で育つと、バナナでさえも酸っぱいとか。
マディラ酒の甘味も、この酸味を兼ね備えていればこそ、引き立ちます。

糖分と酸味に富んでいるこの酒は、時を経れば経るほどに円熟し、
複雑な風味となります。
昨年ブレイクはマディラ島を訪問した際に、1801年のマディラ酒を試飲したのですが、
200年以上を経て、いま尚、素晴らしかったとの事。

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さて、先日サンフランシスコにある料理本の専門書店Omnivore Booksで、
ソノマのRare Wine Co.による、マディラ酒の無料試飲会が開かれたので、
マディラ酒大好き人間の私は、ちょっと立ち寄ってきました。

Rare Wine Co.のバーク氏は、人々にマディラ酒に親しんでもらおうと、
日頃から、アメリカ各地でこのような無料試飲会を開催しています。

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書店で開かれたマディラ酒の無料試飲会で饗されたのは、
ドライなCharleston Sercial 、セミドライなBoston Bual、甘口のNew York Malmsey、
そして1968年DÓliveiraの4種類。
どれもそれぞれの魅力に富んでいるので、飲み比べて自分の好みを知るのも楽しいもの。

Rare Wine Coでは、マディラ酒の他にも、フランス、スペイン、イタリアなど、
その名の通り、各国のレアなワインを豊富に取り揃えています。

大枚をはたいて買うワインは、信頼できるお店で買いたいもの。
店頭販売はしていないので、ソノマの倉庫を訪れるか、オンライン購入となりますが、
品質の管理、そして値段の点でも、信頼できる会社です。

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皆さんは、パートナーの誕生日にワインを送られていますか?

我が家の場合、常日頃からワイン漬けになっている夫に、
ワインを送るのもなんだかなぁ…と思ったのですが、
彼が200年前のマディラを飲んで美味しかったと言うのを聞き、
じゃぁ、古~いマディラ酒をプレゼントにしよう♪と思いました。

流石に200年前のマディラ酒はアメリカでは手に入りにくいので、
1900年のD'Oliveira Verdelho Madeiraを信頼できるRare Wine Coでオンライン購入。
現在このボトルは、セラーの中で、秋に開栓されるのをじっと待っています。

110年の時を経た1900 D'Oliveira Verdelho Madeira のお味は、10月に報告します。
(何故このボトルを選んだかと言いますと、先日マディラ島を訪れた際に、
ブレイクが試飲して美味しかったそうで、ノートに花丸が付いていたからでした☆)

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ちなみに、マディラ酒は飲む前に空気に触れさせた方が、より美味しくなります。
試飲会で使われた1968年物は、2年前に瓶詰めされたものですが、
開栓後に一旦デキャンタに入れ、それをまた瓶に戻したそうです。
(家庭で飲む場合は、少量ずつとなるので一遍にデキャンタするかは悩む所ですが、
大勢で飲むのでしたら、デキャンタでワインを揺り起してあげましょう。)

マディラ酒は、開栓後も長く保存できるのが、嬉しい特徴。
普通のワインとは違い、栓を開けた後でも、2年~5年は確実に保存できます。
(暗く、涼しい所に保管。冷蔵庫の振動は避けた方が無難です。)

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食前酒としてドライなタイプ、食後酒には甘口タイプか、円熟タイプがお勧めです☆
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by sfwinediary | 2011-08-05 02:52 | ワインなお話
先日、ナパで開かれたドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティのテイスティングに
招かれたブレイク。
その様子が記事に載りましたので、和訳しました。
いつもの直球で、アメリカ~ン☆な、ワインライターの本音トークです。


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写真はDRCのHPより

What it's like to taste Domaine Romanée Conti – by W. Blake Gray

先日、遂にドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティをテイスティングする愉悦を得た。
ワイン・オタクの聖杯だ。

家に帰ると友人のグレンが、どんな味だったのか問うてきた。
具体的な内容は忘れたけれど、その時は会話を軽く流してしまった。
しかしどうしても聞きたいと言われたので、DRCのコラムを書くことにした。
Wine Review Onlineのコラム by W. Blake Gray)

コラムに書いたのは、僕の正直な体験談。
実を言うと、終盤に記した出来事について、マジで思い悩み、眠れない夜があった。
あれは本当に起きた事で、恥ずかしい限りだから。
でもね、起きた事は起きた事、なので自分から進んで公にしたんだ。
そしたら浄化作用で、ようやく眠れるようになった。
とりあえず、野球シーズンが始まるまでは、安眠できそうだ。

僕がテイスティングしたのは全部で8種類。
ここにはそのうちの1種類のテイスティングノートを載せようと思う。
(8種全て知りたい方は、Wine Review Onlineをご購読下さい。
英文ワイン記事満載の、面白いオンライン雑誌です。ちょっと営業☆)


このワインを選んだのは、値段的に、そして僕の評価で、ちょうど中間に位置する為。
8種類の値段は$255から$3,725までの幅があって、
僕の付けた得点は93点から99点だった。

Domaine de la Romanée Conti, Romanée-St.-Vivant, Burgundy, 2008 ($1070)
輸入元(米国): Wilson-Daniels
得点:94点

RSVの香りはデリケート。ラズベリー、少々の樽香そしてマッシュルームの香り。
口に含んだ時のうまみは驚きだ。
前面に出ているのはラズベリーの風味、しかしピリッとしている。
燻した肉の風味が強く、ポークリブの燻製所に置かれていたラズベリーを
思い起こさせる。
タンニン風味が顕著なので、長期保存に充分報いてくれるだろう。

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以上、ブレイクの記事の和訳でした。

ワインライターと、ディストリビュータが集まってのドメーヌ・ロマネコンティのテイスティング。
ブレイクの安眠を妨げる程の出来ごととは?
会場でいったい何が起きたのか??

コラムの日本語訳は、次回載せますね☆

(この記事を書いたのは、3月初めでした。
その後、未曾有の災害が起こり、ワインの事をチャラチャラ書いていて良いのだろうか…
と思ったのですが、少しずつ、でも着実に前進する母国の姿に、一安心。
改めて日本人であることを誇りに思う次第です。

…で、いきなりDRCネタ!?
お澄まし君とは、ほど遠い、本音で語る飾らないワインライターである、旦那。
“毎日を楽しくするために、ワインはあるのだ”という彼の姿勢、
そして妻を思ってくれるがゆえに引き起こされた、ある騒動で、
クスっと笑ってもらえたら…と思ってUPしました。
コラムは次回載せますが、待ちきれない方は、こちらの英文記事をお楽しみください☆)

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by sfwinediary | 2011-05-10 02:23 | ワインなお話
ロバート・パーカー氏が、カリフォルニア・ワインのレビューには
もはや携わらないとのニュースが、先日、ワイン業界を走り抜けました。
替わりを引き継ぐのはAntonio Galloni氏。
ロバート・パーカー氏のセミリタイアに寄せた、ブレイクのコラムをどうぞ☆


Thoughts on Robert Parker's semi-retirement –by W. Blake Gray

R・パーカーが、もはやカリフォルニア・ワインのレビューに携わらないとの発表を聞き、
Enologix社はどう出るのだろうか?との思いが頭をかすめた。

Leo McCloskeyは、パーカーの評価に沿うようなワイン造りを技術的に手助けする
コンサルタント手法で、これまで成功を収めてきた。
この方法は、パーカーの後継者アントニオ・ガローニにも有効かもしれない。
恐らくEnologix社では今週あたり、これまでのガローニのイタリア・ワイン評価を
全てさらい、どうしたら高得点を狙えるのか、大忙しで模索している事だろう。

その他にも、次のような事項が思い浮かぶ。

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*パーカーは未だ全面引退したわけではなく、これはボルドーにとっては朗報だろう。
何故なら、彼の評価をなくして、ボルドーの高値はあり得ないからだ。
氏は膝を痛めている為に、今年のアンプリムール・テイスティング(En Primeur tasting)
への出席を危ぶまれるが、ボルドーのワイン業界に与えるその波紋は大きいだろう。
当分の間、彼が最も大切なポートフォリオを手放すことは無いだろうが、
何れは交代の時期が来るので、準備を促す意味では良い事かもしれない。

*ジェイ・ミラーは良い人間だ。でもワイン愛好家として言わせてもらえれば、
彼がワイン・アドヴォケート誌で、カリフォルニア評価を担当しないのは、
ありがたい事だ。

*パーカーのブルゴーニュに対する蔑視は、依然として鮮明だ。
一つの地域を、2人のライターが分けて担当する場所は、他には見当たらない。
オイシイ所は成功者ガローニに引き継がれ、Macon(ブルゴーニュ白ワイン)は
David Schildknechtの担当となったが、“残り物”といった感は免れない。

*ガローニが担当するのは、シャンパーニュ、イタリア、カリフォルニア、
シャブリ、そしてコート・ドールといった広域。
狂気の沙汰だ。
彼が業務をこなせたならば、パーカー氏以上にパワフルな存在となり得るだろう。
しかし、アドヴォケート誌のレベルを保ちながら、一人の人間が
これら全ての地域のエキスパートとなる事は不可能に思える。
こんなに多様で、遠く離れた地域にある、新しいワイナリーのみならず、
全ての小さなワイナリーをも熟知するなんて、とても無理だろう。

*この代替わり騒動の間、ワイン・スペクテイター誌が力を増すか?
可能性はあるだろう。
そして、小規模なEnthusiast, Wine & Spirits, International Wine Cellar
といった面々が、新しい読者を増やす好機でもある。
もしもこれらの雑誌が、パーカー氏と似た評価方法を採用するならば
(力強さを重視、酸味を否定)、追随する読者の獲得は容易いだろう。

*多くのブロガーのリアクションは、パーカーは古い恐竜であり、
得点法なんて問題外だ…というものだろう。
しかし僕は最近、西海岸で最大の小売業者が、5雑誌(上記)で
90点を取れなかったワインは、味見しないと公言しているのを聞いたばかりである。

*小売店にとって得点評価制は、消費者にアプローチし易い、魅力ある販売方法だ。
もしも新パーカーが、これを継続して提供出来なければ、
販売店が独自に得点を付けるのは自然の流れだろう。

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*今回の動きで、パーカーがカリフォルニアでのキャリアを閉じるならば、
いよいよVintners Hall of Fame(ワインの殿堂)入りの時期到来といえる。
選考委員会委員長として、ここでの個人的意見は控えるけれど、
彼は過去2回、ホンの一票の差で殿堂入りを逃している。
来年の投票結果の行方がなんとも楽しみだ。

*パーカーは、カリフォルニア、ボルドー、そしてローヌ地方の
“完璧に保管された状態の”オールド・ヴィンテージを評価する計画でいる。
しかしそれは自己満足でしかないだろう。
何故なら、それらのワインは購入不可能な品々で、ボトルのバリエーション、
保存状態ともに、彼の経験は、他の誰も分かつ事が出来ないものだからだ。

まぁ、そのうちに毎日、どんなランチを食べたかを報告してくれるようになったら
楽しいけれどね。
(彼がバーガー好きか?ハマス・ラップを食べた事があるか?とか、興味ありません?)

*そして最後に、誰もが知りたがっている問い。
ガローニの登場により、これまで過大評価され過ぎてきた、
カリフォルニア・ワインメーカーの幾人かに、再評価が為されるのだろうか?
現在、彼の双肩にはとてつもない責任が乗っている。
カリフォルニアへ、ようこそAntonio Galloni!

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以上、ブレイクのコラムの和約でした。
これからのカリフォルニア・ワイン、
影響度大の評論家の世代交代によって、新しい方向へと進むのでしょうか?
それとも旧態依然として、大きいことは良いことだ…という、
好ましくない方向へと進み続けるのでしょうか。

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by sfwinediary | 2011-02-08 08:29 | ワインなお話

領有権を巡って、イスラエルとシリアの緊張が今も続くゴラン高原。
ここには多くのヴィンヤードが位置し、イスラエルで最高のテロワールを提供しています。
ブレイクのFood & Wine 記事の和約、第2弾をお楽しみください。


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Photo courtesy of Yarden Wines of Israel

Israeli Wine on the Front Lines / By W. Blake Gray

Dalton Winery

イスラエルにおけるワインのルネッサンスは、才能のある若者、
例えばダルトン・ワイナリーのナ―マ・ムアレム(Naama Mualem)のような
存在に依るところが多い。

しかし、彼女の抱える困難は、紛争境界線の向こう側から来るものだけでなく、
イスラエルという国自身がワインメーカーに突きつける難題も含まれている。

ムアレムはゴラン高原生まれ。
彼女の学生時代には、何処へ行くにも武装した兵士の護衛が付き添い、
学生達にとってはそれが当たり前の風景だったと、当時を振り返る。
その後オーストラリアで醸造学を学び、カリフォルニアの
ナヴァロ・ヴィンヤーズでインターンとしての経験を積む。

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しかしこれらの国で身につけた実践的な技術は、母国に帰った後、
残念ながら、彼女自身の手では実践できなくなってしまった。

イスラエルにある17の大規模ワイナリーは、いずれもコーシャー(Kosher)で、
ダルトンもその中の一つ。
ユダヤ教の掟によると、正統派ユダヤ人でない者は、ワイン製造が始まった瞬間から、
葡萄、タンク、樽、果汁、ホース、ポンプ、全ての物に触れる事を禁じられている。

「時にはイライラするわ。でも100万本も製造しているワイナリーでは、
いずれにしろワインメーカーがそういった基本作業をする必要はないのだけれど。」

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代わりに彼女は葡萄畑に力を注いでいる。
気象観測施設を設置して、列ごとの葡萄の平均温度の違いまでを細かく把握。
収穫前に果実の糖分を測定し、葡萄畑のどの樹木が悪戦苦闘しているかを描いた
‘vigor mapping(活性地図)’を導入している。
(悪戦苦闘した木の果実は、風味に富んだ葡萄になる)

そしてこれらの努力の結果は、素晴らしいワインとして実を結んでいる。
中でもダルトンのワイルド・イースト2008 Reserve Viognier は、
ゴールデン・アップルと熟した洋ナシの風味に富んだ、フレッシュな白ワインだ。

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Tulip Winery

チューリップ・ワイナリー(Tulip Winery)は、コーシャーで無いワイナリーとしては、
イスラエルで最大規模を誇る。
CEO ロイ・イツシャーキ (Roy Itzhaki) によると、彼らは必ずしも
それを望んだ分けでは無いのだが、そうならざるを得なかったのだ。

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彼がワイナリーを設立したKfar Tikva(希望の村)は、
障害者と特別ケアを必要とする人々が住む村。

「4年にわたる交渉の結果、コーシャーで行くか、村人を採用するかの決断を迫られたんだ。
そして僕が選んだのは、村人といっしょにワインを造る道さ。」
そして現在、ボトリング、ラベル張り、葡萄の積み下ろしといった、
ワイン造りに関する基本作業に村人が携わっている。

コーシャーで無い為に、Tulipのワインはイスラエルのスーパーマーケットや
アメリカのコーシャー・ワインの棚には並ぶことが出来ない。
「確かに、セールス面では厳しいよ。」と、Itzhakiは語る。

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しかし彼が目指しているのは、品質の高いワインだ。
そしてそれは2005 Black Tulipを飲むと、よくわかる。
凝縮された赤ワインのボトル、ラベルを描いたのはダウン症をもつ青年。
2008 White Tulipは、香り高い白ワインで、ソーヴィニョン・ブランと
ゲヴェルツトラミネール(Gewürztraminer)という他には見ないブレンド。

「僕は夢想家では無いけれど、そのうちいつか僕らのようなワイナリーに
明るい未来が来ると信じているよ。」

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イスラエル・ワイン ベスト5

2008 Tulip Winery White Tulip ($20)
障害を持つKfar Tikva(希望の村)の村人たちが、毎日の基本作業を担っている。
ゲヴェルツトラミネールとソーヴィニョン・ブランをブレンドした、
豊かな味わいの白ワイン。

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2008 Dalton Reserve Wild yeast Viognier ($20)
大規模生産の逆を行く、ワイルド・イーストを使って醗酵させたこの白ワインは、
ジャスミンと桃の素晴らしい香りを持っている。

2006 Golan Galilee Cabernet Sauvignon ($30)
ゴラン高原の幾つかの葡萄園で収穫された果実を使った、カベルネ・ソーヴィニョン。
赤プラムと黒プラムのフルーツ風味、スミレの花の香りを持つフルボディのワインは、
高原の不穏な状態など微塵も感じさせない。

2006 Binyamina Chosen Ruby Galilee Syrah ($50)
イスラエルでも古参のワイナリーBinyaminaは、1952年にハンガリーから移民した
Joseph Zeltzerによって設立された。
そのシラーは新世界風のスタイルで、熟したブラックベリーの風味、
そして香辛料と燻製肉のようなキャラクターを持っている。

2007 Domaine du Castel Grand Vin ($60)
この小さな家族経営のワイナリーが造るワインは、イスラエルでも、最も印象的なワイン。
優雅なカベルネ・ソーヴィニョンとメルローのブレンドは、
ナパやボルドー左岸の最高のカベルネにも匹敵する。
この味で、この値段、まさに買い得の一本。

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以上、ブレイクの記事の和約でした。
オリジナルはこちらからどうぞ☆

ブレイクがイスラエルを始めて旅したのは、もう20年も昔。
フロリダ発、日本を終着点とした、世界一周バック・パック旅行の途中の事。
インターネットもATMも無かった当時の旅行は、今では考えられないくらい、
様々な困難が…。
でも、その反面、何が起きるかわからないワクワクした日々の連続。
遠く故郷を離れての旅は、忘れ難い思い出も多いようです。
次回は彼の回顧録を、UPします☆


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by sfwinediary | 2010-12-07 07:55 | ワインなお話
今年の春、イスラエル視察旅行に出かけたブレイク。
その際の記事が雑誌フード&ワインに載ったので、和約しました。
オリジナルは、こちら (Food & Wine 12月号) からご覧ください☆


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Photo courtesy of Yarden Wines of Israel

Israeli Wine on the Front Lines / By W. Blake Gray

ワインメーカーは、しばしば困難の多かった年について語る。
例えば2006年、ヨーロッパの一部では雨が多くて大変だった…という風に。
でも2006年、イスラエルで大変だった理由は、ただの雨では無く
“ロケット砲弾”の雨。

レバノンで活動するヒズボラは、2006年の7月~8月、イスラエル攻撃を敢行。
その際に発射されたロケット砲弾の数は4,000発以上と言われる。

イスラエルで最高のヴィンヤードは、いずれもゴラン高原に位置しているが、
これらの葡萄園は国境から近い為、随時、標的になりうる危険性と隣り合わせだ。
実際に何件かが砲撃を受け、多くの農家は収穫時まで葡萄畑に近づく事が出来ず、
最前線に近いワイナリーでは、その門を閉ざさざるを得なかった。
イタリアのトスカーナ辺りでは、まず考えられない“困難”だ。

今年初め、僕はイスラエルを訪問して、彼の地のワイン知識を増やしたのだけれど、
同時に、鉄条網フェンスや銃で武装した警備員についてもよく知る事となった。
そしてワイナリーの工業的な外見と、むき出しの大きなタンクにも慣れた。
(大抵の場合は醸造用タンクなのだけれども、時には戦車のタンクも混じっている。)

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ほんの20年前、イスラエルのワインと言えば甘口で、残念ながら酷いものだった。
でもそれ以後、過酷な条件の中で飛躍的な進歩を遂げ、現在では、
オールド・ワールド(古くからワインを作る国)の最前線で活躍する、
もっとも注目されるワイン国となった。

ではここで、イスラエルでベスト4のワイナリーをご紹介しよう。

Golan heights winery / yarden

紀元前からワインを作り続けている国のこと、皆さんは、さぞかし古くから続く
素晴らしい葡萄畑が延々と広がっているのだろう…と思われるかもしれない。
でも実際には1967年まで、葡萄栽培に向く土地は、この国にはほとんど無かった。
それを変えたのは、第三次中東戦争(六日戦争)だ。

だてに“高原”と呼ばれているわけではなく、ゴラン高原の標高は高く、気候も涼しい。
70年代にカリフォルニアのエキスパートが、この高原はイスラエルで
最高のテロワールを生み出すだろうと予測したけれど、それは事実だった。

この20年ほど、ゴラン高原と近隣のユダヤ丘陵では、葡萄の栽培ラッシュが続いている。
1960年代には90%のワイナリーが、気候の暑い海岸地域に位置していたが、
現在では44%まで減っている。

ゴランハイツ・ワイナリーのワインメーカーで、南カリフォルニア出身の
ビクター・ショーンフェルド(Victor Schoenfeld)は、
この地におけるワイン造りの難しさについて語ってくれた。

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僕がワイナリーに向かう途中、1948年のアラブ・イスラエル戦争で爆撃を受け、
事実を忘れないようにと、そのまま道端に置かれている乗用車の残骸を見かけた。
また、大きな軍基地を通り過ぎた際には、兵士が穴掘り作業をしている姿が見られた。
でも、こうしてショーンフェルドと葡萄園に立ち、360度見渡しても、
目に映るのは葡萄畑だけ。
恐らく休戦中の戦場というのは、どこもこのような雰囲気なのだろうか。

シリアは高原の管轄権を、今も主張している。
もしもシリアが本当に平和を望んでいるのならば、イスラエル政府は
ゴラン高原を返還すべきだと、ショーンフェルドは考える。
「でも、ワインが絡むと、そうシンプルには行かないんだ。
僕らの仕事は、短期間で方が付くものではないからね。」

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ショーンフェルドは大学時代、イスラエルに1年滞在した経験を持つ。
1988年にUCデイビスを卒業後、R.モンダビ・ワイナリー、シャトーSt.ジーン、
プレストンで経験を積む間、毎年のようにゴランハイツ・ワイナリーからの要請を受け、
ついに1991年、人生の財産となる事を願いながら、この土地での仕事を承諾した。

その後イスラエル女性と結婚し、市民権を取得。
一旦ワイナリーに専念する事を決意した彼は、この国のワイン品質革命に乗り出し、
大変な努力を払いながら、ゴラン高原での葡萄栽培も始めた。

この先どうなるかは不確かな、この地。

でも彼が2006 Golan Galilee Cabernet Sauvignonのような、
複雑で素晴らしい風味のワインを造り続ける限り、
今のところ“良好”と言えよう。

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Vitkin Winery

イスラエル古代からの葡萄栽培知識は、長きにわたるイスラム教支配時に消え去り、
全ての葡萄畑は伐採されてしまった。
そして今、ワインメーカー達は、この土地と気候に最も合う葡萄を探そうと
様々試みている。

イスラエルでもっとも古い葡萄は、40年前に植えられたもの。
しかし残念ながら、そこは葡萄栽培に理想的な土地ではなかった。
また、広く植えられたのはボルドーと同種のカベルネ・ソーヴィニョンとメルロー。
もちろん、イスラエルではなかなかのカベルネが造られているのだけれど、
僕が各地を旅して、実に多くのワインを試飲した結果、
長期的に見てこの地に一番合っているのは
地中海地方で栽培されている葡萄種だと考えるに至った。

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Vitkinのオーナー兼ワインメーカーのドロン・ベロゴロフスキー(Doron Belogolovsky)も、
同じように考えている。
「イスラエル・ワインは、もっとビッグであるべきだし、ビッグになるだろう」
ここでの“ビッグ”は、芳醇でコクのある、地中海スタイルのワインの事。
「我々はボルドーでは無いし、人の真似をしても二番煎じにしか成りえないからね。」

彼はもともと石材商を営んでいたのだが、イタリアに大理石の買い付けに行く間に、
ワインの虜となった。
彼の造るワインは、熟成しながらバランスの良いもので、
地中海でよく見られる、カリニャンやプティ・シラーといった葡萄が使われている。
「イスラエルに最適の葡萄だよ。暑さに強いし、水をあまり必要としないからね。」

ベロゴロフスキーの造るカリニャンはブラック・カーラントの風味に、
胡椒のような後味を持つ。
そして、カベルネ・フランクは、僕がイスラエルで試飲した中で最高のワインだ。
残念ながら5,000ケースしか造られておらず、アメリカには輸入されていない。
もしもテレアビブを訪問する事があるなら、是非レストランのワインリストに
彼のボトルを探してみて欲しい。

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長くなるので、続きは次回に☆
待ちきれない方は、こちらから英文オリジナルをご覧くださいませ☆

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by sfwinediary | 2010-12-04 04:56 | ワインなお話