カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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<   2010年 09月 ( 7 )   > この月の画像一覧

「とっても楽しかった~~~!」
と声を大にして言いたい、ナパのワイン・トレイン旅行。

初めてカリフォルニアのワイン・カントリーに足を踏み入れてから、早、幾年月…。

実はこれまで、“ワイン・トレイン”って、ちょっとcheezyなのではないかな…
なんて、先入観があったのですが、先日、実際に列車に乗ってみて、
そんな思いは、みごとに吹き飛んでしまいました。

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楽しみ方のポイントは、“動くレストランで、美味しいご飯に舌鼓を打ちながら
車窓に展開するナパの街並や、ヴィンヤードの風景を満喫”する事。

オーソドックスに、個々のワイナリーを、いくたりか訪ねたい…という方には、
正直、向きません。

でもね、でもね、フルコースを堪能しながら、
ワインメーカーの話を聞けて、
(ここまでは、普通のワイン・ランチやディナーというのがありますが)
それに加えて、どこまでも広がる葡萄畑と
青いカリフォルニアの空を、車窓に楽しむ…
なんてチャンス、めったにありませんでしょう!?

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(これまでNapaを訪ねる事、数えきれず…。この日漸く、この写真が撮れました♪)

ブレイクのお供で、私が参加したのは、“ワインメーカーと楽しむランチ”のコース。
この日、列車に乗ったのは、スワンソン・ヴィンヤーズのワインメーカー、
クリス・フェルプス(Chris Phelps)氏。

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笑顔が素敵な優しい紳士♪

クリス氏は、カリフォルニアでも歴史あるワイン醸造の街、リヴァーモアの出身。
ワインとフランス語が大好きと語る氏は、UCデイビスを卒業後、
ボルドー大学でも醸造学を修め、シャトー・ペトリュスでワイン造りに携わり、
1999年からCaymus Vineyardsで、赤スペシャリスト・ワインメーカーを務めます。
そして2003年、スワンソン・ヴィンヤーズのワインメーカーに就任。

27年ワインを造り続けてきたクリス氏が、特に思いを入れているのは“メルロー”。

実はこの日、出発駅での挨拶の際、氏が、
「メルロー、ピノ・グリージオ、カベルネにポイントを置いています」
と言ったところ、
「フン、メルロー!?」
と、鼻で笑って、注目を集めたアジア系アメリカ人青年がいました。

映画Sidewaysのマイルズを気取っているのか、
マスコミに影響されやすい性格なのか?

実は、映画以来、先入観だけでメルローを毛嫌いする人が増えたのを、
クリス氏はとても残念に思っていて、何とかメルローの良さを分かってもらうべく、
全米で啓もう活動を展開しているとの事。

(ペトリュスにいたクリス氏の造るメルローだったら、飲んでみたい~~♪と、
私なんかは単純に思ってしまうのですが…☆)


確かに、映画前には、実に多くのアメリカ人が「メルロー」を飲んでいました。
飲みやすいし、合わせやすい食材も多いし、それはとっても納得のいく選択。
でも人気に乗って、カリフォルニア州のどこもかしこもメルロー葡萄が植えられた結果…、
まず~いメルローが、市場に大量に出回る事に。

そこで揺り返しが来て、Sideways のマイルズのようなセルフが出てきたって訳☆

でもね、マイルズ(この場合映画監督ね)のように、色々飲んできた結果として、
自分なりの“こだわり”を作り上げた人間が、「俺はメルローなんて絶対に飲まない!」
っていうのなら分かるのですが、映画のセリフにあったからって、
美味しいメルローを飲む機会を、若い身空で生涯、閉ざしてしまうなんて、
もったいないと思いませんか?

クリス氏が青年に、じゃあ何を飲んでいるの?と聞いたところ、答えは
「ピノかカベルネ」

映画の後で、同じ現象がピノにも起きている事、青年は知っているのかな?
今や、どこもかしこもピノ葡萄畑だらけ。
でも、暑~~いセントラル・コーストのピノなんて飲みたい?
これマジでピノですか?って、正体不明な程、ビッグでボールドになってしまった
ピノなんて、飲みたい?

今から何年後かに、まずいピノの氾濫に憤慨した監督が
「俺はピノなんか絶対にのまない!」
というセルフのある映画を作るかもしれませんね。

ワインを楽しむコツは、メディアにつられて特定の葡萄銘柄を排除するのでは無くて、
誰が造った、どのボトルを、自分なりに上手に選んで飲むか…
ではないかなぁと思います。
それが醍醐味だしネ♪

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さて、列車の話に戻りましょう。
折しも収穫の秋。車窓からは、たわわに実った葡萄畑が見渡せます。
でも、青々とした葉っぱの中に、そこここで赤茶色に変色した所が…。

「この時期の赤い葉の葡萄は、見た目はきれいに映るでしょう?
でもワイン造りに携わる人間たちにとっては、悲しい事なんですよ」
と、クリス氏。葡萄の病気で、スワンソン・ヴィンヤードでも、
かつて3分の2の葡萄を植え替えたとの事。
折しも、窓から遠くに眺めたFar Nienteの葡萄畑、一部変色しているのが見えました。
こんな会話も、ワイン・トレインからの眺めあればこそかな。

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この日、賞味させていただいたのは、スワンソンのピノ・グリージオ、
シャルドネ、そしてメルロー♪

2008 Swanson Vineyards Pinot Grigio Napa Valley (SRP $21)
口当たりのまろやかなピノ・グリージオ。
熟した桃、洋梨の風味。

2009 Swanson Vineyards Chardonnay Oakville (SRP $42)
フランス風の優雅なシャルドネは、一般的なビッグなナパのシャルドネとは
一線を画したワイン。
ミネラル風味に富み、マイヤーレモン、蜂蜜の香りが魅力的。

2006 Swanson Vineyards Merlot Oakville (SRP $36)
ナパの中心、オークヴィルのエステート葡萄園のメルロー。
ブラック・チェリー、ブラック・プラムの風味。
クリス氏によると、あと10年は保存できるとの事。

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楽しい時間はあっという間に過ぎて、2:30に列車は再びナパへ。
直後にブレイクが、ダウンタウンでの会議を控えていたので、
挨拶もそこそこに、駐車場にダッシュ。
ナパのワイン・トレインを後にしたのでした☆ チャンチャン♪

次回、列車探検記をUPしま~す☆
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by sfwinediary | 2010-09-30 09:43 | 旅行記
Dane女史がワインメーカーに就任後、ビッグ・ハウスのワイン達は、
スクリュー・キャップを纏うようになりました。
コルク・ファンだったランドル氏の時代との違い、
ルーマニア生まれのワインメーカーがもたらした変化は、それだけではありません。

ブランド名はビッグ・ハウスですが、ワインはヨーロピアンな風味。
女史がどのような人生の流れに乗って、アメリカで活躍することになったのか?
ブレイクの記事の続きです☆ オリジナル(英文)はこちらからどうぞ♪


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Big House wines: Better after leaving Bonny Doon  by W. Blake Gray

「娘はちょうど生後一カ月で、教会で洗礼を受けていたわ。
そこへアメリカのグリーンカードの抽選に当ったという知らせが、舞い込んできたの。」
と、女史は当時を振り返る。

「乳飲み子を抱えているし、二人とも英語は全然話せない。
それに知り合いなんて一人もいなかったし、正直、とても不安だったわ。」

ルーマニアで英語教師をしていた知人の、そのまた知人が、カリフォルニアの
モントレーに住んでいたことから、一家はその地を移住先に決める。
初めに夫君が、そして3ヶ月後に彼女が娘を連れて渡米した。

ケンダル・ジャクソンが新しいワイナリーを建設中だった事から、
夫のCorneliu氏はセラーラットの職に就き、
後を追ってきた彼女は、ラボの技術者として働き始める。

彼らはものすごい勢いで英語を習得するとともに、技術面での鍛錬も目覚ましかった。
Corneliu氏は1年の内に醸造技術者(enologist)に昇進、
Dane女史もゴールデン・ステート・ヴィントナーズで
アシスタント・ワインメーカーとなった。

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ザ・ワイン・グループ(The Wine Group)、
アメリカで2番目に大きな(2010年9月現在)ワイン会社が、
2004年にゴールデン・ステート・ヴィントナーズを傘下に収める。
ワイン・グループは、E&Jガロやコンステレーション社ほど、
メディアの注目は無いが、フランジア(Franzia)、イングルヌック(Inglenook)、
フィッシュ・アイ(Fish Eye)、グレン・エレン(Glen Ellen)といった、
強力な面々のスーパー・マーケット・ワインを展開している。

そして2006年、ワイン・グループは、ビッグ・ハウス(Big House)、
カーディナル・ジン(Cardinal Zin)を取り込む。

「20万ケースのビッグ・ハウスを造り続けるのは、
材料の確保が難しく、インフラストラクチャ面でも譲歩を強いられた」
と、最後まで売却価格を明かさないまま、グラハム氏は同ブランドを去る。

グラハム氏はサイズダウンを目指し、メディアも彼に追随。
一方で、ビッグ・ハウスは、ますますビッグになって行った。

売却劇の直後から、ビッグ・ハウスのワイン造りを一手に任されたDane女史は、
5年前と比べると、今やその10倍の量のワインを世に送り出しているという。

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もともとビッグ・ハウスは、グラハム氏が他のラベルとして売るのに、
何らかの理由で該当しない葡萄達を、集めて造られたブランドだ。
初めは驚いたと、女史は当時を振り返る。

「それまでは、私も普通のワインメーカーのように、
毎年15種類ほどの葡萄をクラッシュしていたわ。
でも、ビッグ・ハウスのプロジェクトが始まってからは、
それが一気に42種類にも増えたの。

Teroldego(テロルデゴ)、Charbono(チャルボノ)、Verdelho(ヴェルデーリョ)
…挙げたらきりがないわ。

ランダル氏は、一風変わったイタリア葡萄を植えるよう、葡萄農家達に
一生懸命働きかけていたけれど、私達はその契約を全て引き継いだの。
初めはてんてこ舞いだった。
ヴィンヤードとの付き合いが、それまでまったく無かったから。」

ブランドを引き継いだ時、Dane女史はビッグ・ハウスの味に、
正直それほど感銘を受けたわけではなかったと言う。
(当時の味を、僕も覚えているし、彼女に同意する。)

「ワインの味自体が賞賛されたと言うよりも、それまで(カリフォルニアには)
無かったイタリア葡萄を取り寄せて来て、全ての品種を隈なく使った事、
それが皆に受けた理由だと思うの。」

混乱の中に秩序をもたらすため、彼女は42品種の葡萄を、
まずは個別のワインに造り上げる。
「エッセンシャルオイルと同じよ。それらを調合して香水を造るというわけ。
まず基本のワインを作って、それにエッセンシャルオイルを足していく。
それが私のワイン哲学。」

彼女の基本ワインは、3種類の香りに富んだ葡萄たち、
Malvasia Bianca(マルヴァージア ビアンカ)、Muscat(マスカット)、
そしてViognier(ヴィオニエ)だ。

「これだけだと、香水に例えたら、安い香水。
なので、例えばBig House Whiteでは、Pinot Grigio (ピノ・グリージオ)と
Gruner Veltliner(グリューナー・フェルトリーナー)を中間の味に置いて、
深みを加えたの。トップの華やかさに、
Gewurztraminer(ゲヴェルツトラミネール)のバラの香りを添えてね。」

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Big House White 2009 ($8)

この価格帯では、おそらく最高の香りを持つ白ワイン。
ジャスミン、ホワイト・フラワー、ほんの少し大地の香り、そして茘枝(レイシ)。
大量生産のワインで、これだけの味を持つものは、なかなか簡単には見つからないだろう。
グラハム氏時代のビッグ・ハウス・ホワイトよりも、向上している。

Big House Red ($8)

白ワインほど高レベルではないけれど、Dane女史の造り出す、赤ワインもなかなかだ。
果実味に富み、アルコール度を低く抑え、オークで厚化粧をしたりしていない。
この価格帯の多くは、ティー・バッグ状になったオーク・チップをタンク入れて、
オークとヴァニラの風味を加えている。しかし、女史はそんな姑息な手は使わない。

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「ワイナリーには2万の樽と、400個のタンクが並んでいるわ。
私達は、カリフォルニアで一番大きなスモール・ロット・ワイナリーなの。」

ワイン・グループは、ビッグ・ハウスのラインアップを増やし、
1万ケース単位で、数種類の品種をラインアップに加えている。

その中で一押しは、The Slammer Central Coast Syrah 2007 ($11)
燻製肉から、ジューシーな赤プラムへと風味が変身する、魅力的なシラー。
ハンバーガーにピッタリの赤ワインだ。

マーケティングの一環として、ワイン・グループがDane女史につけた
ニックネームは『刑務所長』。
刑務所長もまた、仕事の成功ぶりと、メディアの人気度は必ずしも比例しないのは、
アイロニカルと言えるかな。

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以上ブレイクの記事の和約でした。
オリジナルはこちらをどうぞ♪

ボニー・デューンからビッグ・ハウスを引き継いだものの、
ランダル氏には、まったく会った事が無いというDane女史。
彼がどのようにビッグ・ハウスワインを造って来たか、それまでのレシピも無し。
それ故に、女史オリジナルの、まったく新しい味を、このブランドにもたらしました。

毎日の食卓で楽しめるように、シンプルに、料理に合うように造られていると事。
すぐに飲む為のワインなので、クローゼットに仕舞い込まないで、
気軽に楽しんでください☆


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by sfwinediary | 2010-09-28 09:33 | ワインメーカーのお話
ボニー・デューン・ヴィンヤードのグラハム氏がBig Houseを売却後、
このブランドのワイン造りを一手に担っているのは、
ルーマニア生まれのワインメーカー、Georgetta Dane女史。

先日、夕食をともにする機会がありました。
様々な人生の転機を乗り越えて、大地にしっかりと足をつけた
凛々しい女性ワインメーカー。

ブレイクの記事を訳しましたので、お楽しみください☆
オリジナル英文記事は、こちらからどうぞ♪


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Big House wines: Better after leaving Bonny Doon by W. Blake Gray

人気コメディアンの後で、ステージに立ちたい者は、そうそう居ない。
ワイン業界でも、同じ事が言える。
Georgetta Dane女史は、ランダル・グラハム氏に会った事が、まだ無い。
だが、彼のファンには、至る所で遭遇している。

ビッグ・ハウスは、2006年にグラハム氏の手を離れ、ワイン・グループに売却された。
しかし、その事実を知らないファン達は、Dane女史が現在の
ワインメーカーである事を知ると、失望を隠さないという。

また、多くのワイン・ライター達も、グラハム氏の熱烈な支持者だ。
他所から買った葡萄で造られたワインでも、
彼特有の気まぐれとロマンスを纏(まと)うと、何とも魅力的に映るからだ。

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お茶目なランダル氏☆

「ワイン・ライター達に受け入れられるのは、至難の業よ」
と語るDane女史。

背の高い、自信に満ちた、ルーマニア生まれのフード・サイエンティストは、
ランダル氏が書いた、ボニー・デューンのバック・ラベルや、
ダンテの神曲のパロディのように、筆を驚かせてはくれない。
だが、彼女の歩んできたこれまでの人生は、
UCデイビスを卒業して、アメリカで活躍してきたグラハムよりも、
色彩に満ちている。

「ワイン造りは簡単。私は砂糖を、夫はオイルに関する研究をしてきたけれど、
これらは造るのが難しいし、テクノロジーもまだまだ。
それに比べたら、ワインはケーキを作るようなもの(簡単の意)。
ワインは自らワインになってくれるから、ワインメーカーは手柄を横取りね。」

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こういったからと言って、彼女がワインにロマンスを感じないと思うのは、早合点だ。
1993年にフード・サイエンンスの学位でルーマニアの大学院を卒業した時、
彼女には二つの選択肢があった。
大きなワイン生産工場で働くか、ソーセージ工場で働くか…。
「ソーセージ工場には、ロマンチックな所は無いと思ったの」
そして彼女は、大量生産のテーブルワインを造る仕事に就いたのだった。

「いわゆる社会主義国の大量生産工場の一つでね、ワインは全部、同じ味。」

その後、彼女と、同じくワインメーカーである夫のCorneliu氏は、
自らのワイン・ビジネスを立ち上げる。
ルーマニア各地から葡萄を買い付け、ブレンドし、自らのラベルで販売。
同時に彼女は、家計の為に、高校で科学を教える忙しさだった。

そして、とある夜。
パーティの席で10人の友人達が、アメリカのグリーンカード抽選に
応募することを思い立つ。

数ヵ月後、彼女の人生は、大きく変わる事になる。

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長くなるので、2回に分けます☆

「まるで、キャンディ・ストアにいる子供のようなものかも。
色々な葡萄を前に、ああしたり、こうしたり考えるのはとっても楽しいことなの。」
と言うDane女史は、ワインについて語る時、目がきらきら♪

続きを待てない方は、こちらからブレイクのオリジナルをお読みくださいませ♪

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by sfwinediary | 2010-09-25 09:00 | ワインメーカーのお話
アメリカ各地とイタリアに拠点を置き、大学で教鞭をとりながら、
ワインを造り、考古学の研究に勤しむという、
実に様々な顔を持つ、Wrathのワインメーカー、マイケル・トーマス氏。

先日、Wrath のソーヴィニョン・ブランと、ピノ・ノアールを
飲む機会がありました。
個性的なラベルに相応しい、個性的な味をもつワイン達。

マイケル氏の物語記事を、ブレイクがUPしたので訳してみました。
オリジナルは、The Gray Market report こちらからどうぞ♪


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『Trying to survive on the grapes of Wrath 物語』  By W. Blake Gray

ナパ・ヴァレーには『幸運な遺伝子 (lucky sperm)』という言葉がある。
素晴らしい葡萄畑やワイナリーを、遺産として受け継いだ者を指す用語だ。

この言葉は、マイケル・トーマス氏にも当てはまるだろうか?
彼の場合、義理の父親が82歳という高齢になった為に、
モントレー郡にあるワイナリーWarth とSan Saba Vineyardの経営を、
余儀なく継がされたのは、2007年の事。

当時、彼は義父のワインが好きではなかった。
なにより、カベルネ葡萄の栽培量が多すぎた。
また、先見の目を持たなかった義父の判断で、
素晴らしいテロワールだと彼が信じて疑わない自家葡萄畑は、
プレステージのアペレシオンに入る事が出来なかった。

「たったの道路1本の差で、サンタ・ルチア・ハイランドのアペレシオンから、
外れてしまったんだ。理由は、義父が周囲の人間を怒らせたからなのさ。」
と語る、トーマス氏。

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彼がワイナリーとヴィンヤードを継いだのは、43歳の折り。
ニューヨークに住居を構え、テキサスの大学で教鞭をとり、
イタリアで考古学者として活躍していた彼にとって、
カリフォルニアのモントレー郡は、少々遠い地だった。

しかしながら、こうしてワイナリーとヴィンヤードを受け継ぐ羽目になってしまった運命。
果たして、幸運と呼べるのだろうか?

「考古学者としてのキャリアは、あの時、閉ざされてしまったね。」
と語るトーマス氏だが、15年前に開始した、フローレンスの北東にある
Etruscanでの発掘は、現在もどうにか続けている。

近隣農家といっしょに葡萄畑のフェンスの修理を行い、
Byron Kosugeの手助けの元、より優れたワインを造る努力を怠らず、
フルタイムで葡萄栽培に携わる人々が、懸命に販売先を探している、この不況の中、
何とか時間を捻り出して、葡萄を買ってくれる市場を探す…。
その多忙さは、推して知るべし。

「かつてはトン当たり$2,800だったけれど、今年は$1,200で売れれば、
ラッキーだろうね。去年までは、葡萄を販売していたのだけれども、
今年は売れなかったので、バルク・ワインを造っているんだ。
優美に実ったシャルドネを、たった今(先月の話です)バルクに入れてきた所さ。

…売れると良いんだけれどね。」

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彼は現在、奥方がモントレーに移住してくれるようにと、ロビー活動中だ。
だが、彼女はNYからテキサスに移住したい考えだという。

これから先、彼は如何に3足の草鞋(わらじ)を履きこなしていくのだろうか、
率直に言わせてもらうと、かなり難しいのではないかと思う。
しかし、何層にも重なった土壌について思いを馳せる考古学者、
そしてイタリアワインの愛好家である彼は、
自家葡萄畑を熟知し、そこから最高の産物を造り出す人間として、
最適任者だと言える。

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考古学者の命名らしく、彼のワインには "Destruction Level" という
名が付いている。
これは黒い炭素の層で、彼によるとスモーキーな要素があるという。

The Wrath "Destruction Level"
Monterey Sauvignon Blanc 2008 ($29)


まろやかな口当たりだが、けっしてボディが大きすぎる事は無い。
アルコール度はたったの13.2%。
異国情緒たっぷりのパイナップル、レモングラス、そしてエスカロールの風味。
新オーク(30%)が使われているのと、普通見かけない
シャルドネを3%だけブレンドしているのが、リッチな風味の秘訣のようだ。

自家製葡萄園の葡萄を使用しているのに、ラベルには記されていない。
理由?
このワインは、本質的に同じ要素を持つ、もうひとつのバージョンがあるのだ。

Wrath San Saba Vineyard
Monterey Sauvignon Blanc 2008 ($23)


こちらは100%ステンレス製タンクで醸造され、
パイナップルの皮、レモングラス、エスカロールと、
同じキャラクターを持ちながら、口当たりがとても爽やかで、
アルコール度も幾分低い12.7%となっている。

“純粋主義者”と呼んでくれても、“ケチ”と呼んでくれてもいいんだけれど、
僕が推薦するのは、こちらのソーヴィニョン・ブランだ。

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Wrath "Fermata" Monterey Chardonnay 2008 ($40)

Fermataは停止という意味。マロラクティック醗酵を止め、
強烈なトースト、レモンの香りを残しながら、樽香が強すぎないようにしている。
リッチであるけれど、酸味を残した、
サンタ・ルチア・ハイランドらしい魅力を持つシャルドネ。

トーマス氏によると、多くの葡萄が、樹齢30年以上を経ているとの事。
通り一本を隔てているので、アペレシオン表示は出来ないけれどね…。

Wrath Doctor's Vineyard Santa Lucia Highlands Syrah 2007 ($50)

こちらは購入した葡萄から造られたシラー。
なかなかの美味で、仏ローヌのワインを彷彿とさせる。
燻製牛肉、胡椒、ブラックプラム、ラズベリー、そして大地の香りと風味。

たったの70ケースしか造られなかったのは残念だけれど、
このご時世なので、$50の値段が付くシラーを大量に作っていたら、
販売が大変だったかもしれない。

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トーマス氏は、彼の将来をなかなか現実的に見ている。
「オーストラリアが売っている、超安価なシャルドネは、
全世界のワイン市場に影響を及ぼしている。
北カリフォルニアのワイン業界の復活は、最後かもしれないな。」

しかし、少なくとも、彼は2つの安定した職を持っている。
「僕が応援するスポーツチームは、世間から最も嫌われているチームでね、
カウボーイズに、ヤンキース、そしてデューク大のバスケットボールさ。」
このデューク卒業生は、やっぱり地球上で一番ラッキーな男なのかもしれない。

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by sfwinediary | 2010-09-17 07:42 | ワインメーカーのお話
旅先で出会って惚れこんで…、
でも地元の店では手に入らないワイン。
そんなワインに久しぶりに出会えると、とっても嬉しくなります。

ブレイクの故郷、ボルティモアを訪れる度に楽しみなのは、
オリオールズの試合と、ブルー・クラブ(蟹)、そして煉瓦の街並み。
(SFでは地震があるので、煉瓦造りの建物はあまり見かけないので☆)

その昔、ボルティモアのギリシャ料理レストラン、
The Black Oliveで飲んだ時に惚れこんだものの、
サンフランシスコではついぞ見かけたことが無く、あきらめていたリースリングがありました。

でも、去年シドニーのワイン・ショップで、ついに再会。
即買で持ち帰ってきたのは、オーストラリアの美味しいワイン、
ルーウィン・エステートのアート・シリーズ、リースリング。

2008 Leeuwin Estate Art Series Riesling
Margaret River Australia

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ストーン・フルーツ(植物核果)、ストーン(石版)、ネクタリンの香りと風味。
メインの風味は3種類と、決して複雑ではないけれど、
3つの要素が完璧なハーモニーを奏でているワイン☆

アルコール度は12%と低いので、あっという間にボトルは空に…。
ビッグで、ドライなリースリングが飲みたい時に、お勧めの1本。

日本でしたら、ヴィレッジ・セラーズで購入できます☆
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by sfwinediary | 2010-09-07 13:42 | White Wine
先日行われた、サンフランシスコ・ナチュラル・ワイン・ウィークで、
面白いワイン・ボトルを見かけました。
San Francisco Natural Wine Week

ステンレス製のボトルの中身は、Liocoのソーヴィニョン・ブラン。
Lioco, Natural Process Alliance & Salinia
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2009 Lioco Sauvignon Blanc
Russian River Valley / $15


香りは、グレープ・ジュース。
醸造されたワインとは思えない、甘~い葡萄液の香り。
子供のころに山梨で飲んだ、一升瓶に詰められた、
しぼりたての葡萄液を彷彿とさせる芳香。

味は、濾過されていないので、野性味にあふれた風味。
別の言い方では、洗練されていない…って事にもなるのですが、
そこは個人の好みの問題かな☆

このワインは、初回はボトル代を含めた代金でお買い上げ。
2回目から空ボトルを返品すれば、中身の代金だけでOKというシステム。

ぶっちゃけて言えば、フランスでバルク・ワインを買う時に、
店にペットボトルや、思い思いの容器を持参するそうですが、
そのかわりにカリフォルニアでは、このステンレス製の
密封度に優れたボトルが登場したと…いう次第。
(水筒代わりにも使えるそうです)

サンフランシスコでは Arlequin Wine Merchant で購入できます☆

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Arlequin Wine Merchant

さて、Liocoでは、ユニークなヒッピー風の名前がつけられた
赤ワインも造られています。

2007 Lioco Carignan Blend ‘Indica’
Mendocino County


carignan (78%) petite sirah (10%) mourvedre (9%) grenache (3%).

メンドシーノ郡はその昔、ホップの栽培が盛んでした。
今では、代わって葡萄が栽培されていますが、合法的な医療用大麻の栽培でも有名。
このカリニャン葡萄のブレンド赤ワインには、
「インディカ」という名前がつけられていますが、
メンドシーノ郡に敬意を払った命名だとか…。
(医療用大麻の効用は、インディカ"indica"はリラックスムードに、
サティーヴァ"sativa"は元気になるそうです☆)


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そういえば、先日ヒストリー・チャンネルを見ていてビックリ☆
その昔、コカコーラにはハーブの「コカ」が使われていましたが、
ワインでも、コカのハーブ入りなんていうのがあったとか(19世紀だったかな)。
どんな味だったのでしょうね、美味しくなさそうな気がするのですが…。

Liocoのインディカにはハーブは入っていないので、リラックス効果のほどは不明。
軽いボディなのですが、飲めば飲むほど味が出る感じなのは、名前のせいかな?
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by sfwinediary | 2010-09-03 08:04 | White Wine
今年で2年目を迎えるサンフランシスコ・ナチュラル・ワイン・ウィーク。
San Francisco Natural Wine Week
“ナチュラル・ワイン”を一般の人に、広く知ってもらおうという啓蒙活動です。

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しかしながら、オーガニック・ワインやバイオダイナミック・ワインの定義のように
“これがナチュラル・ワインだ!”という確たる定義はまだ無く、
造り手によって様々に解釈されているのが、アメリカでの現段階の様子。

何を持ってナチュラル・ワインと呼ぶかといえば、
地球にやさしく、農薬などを使わないで葡萄を栽培、
酵母はナチュラル・イーストを使用、
酸化防止剤は一切使わないか、使用する場合は極力抑える、
フィルターにかけない、等々の条件が浮かびます。

例えば、ナチュラル・イーストが使用されている場合、
葡萄畑に自然に存在しているイースト菌を使って、ワイン造り…。
何種類か存在する中から、早いもの(強いもの?)勝ちなので、
どのイーストが醸造過程に影響するのか、その辺りは自然にお任せ。
そのため発酵の過程での失敗も多いと聞きます。

でも、成功した時のワインは、
テロワールを反映して素晴らしいものになる…
というのが、ナチュラル・ワインの魅力のようです。

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先日、サンフランシスコのヘイズ・ヴァレーにある
Arlequin Wine Merchantで行われたテイスティングに出かけ、
美味しいワイン、面白ワインを見つけました☆

Arnot-Roberts (アーノット・ロバーツ)の自然ワインは、
どれをとっても美味♪
中でもお勧めはこの3種。

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2009 Arnot-Roberts Old Vine White
‘Çampagni Portis’ Sonoma Valley / $31.5


ソノマ・ヴァレーの古い木から採れた葡萄を使った白ワイン。
古すぎて、葡萄品種を確定できないとか☆
おそらく、gewurztraminer、 trousseau gris 、d rieslingのブレンド。
ミステリアスな白ワインは、トロピカルな、心地好い甘い香り。
風味はレモンに、少しだけハーブも。
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2008 Arnot-Roberts Syrah
‘Hudson’ Carneros / $59


ブラックベリー、チェリーの香りと風味。
酸味とのバランスが良く、スパイスがほんのり効いたシラー。
アルコール度は12.5%の低さ。
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2008 Arnot-Roberts Syrah
‘Clary Ranch’ Sonoma / $40


文句なく、この日並んだ30種以上の中で、一番の美味しさ!
いわゆる、“シラー”らしい、繊細なシラー。
香りはポプリのような、ハーブ系。
味は、舌に心地よいレッド・カーラントの酸味と、良く熟したラズベリーの風味。

アルコール度は、何と!たったの11%。
風味が複雑でありながら、飲みやすく、飽きさせないワイン。
こういったシラーがあるから、やっぱりシラーって良いなぁと思える1本です☆
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by sfwinediary | 2010-09-01 10:58 | ワインなイベント