カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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ハイエンドなレストランでよく目にする“ワイン・ペアリング”。
コース料理の一つ一つに、ソムリエが選んだ最適なワインが饗されるメニュー。
果たして、その必要性は?
ブレイクの記事の和訳をお楽しみください☆


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Is pairing wine with each course necessary? - by W. Blake Gray

昨日、アメリカをリードするシェフ&ソムリエ・コンビから、驚きの告白を聞いた。

ミシュランの3星を冠するレストラン・アット・メドウッド(The Restaurant at Meadowood )は、
創造的な料理とワインのペアリングで有名だ。
シェフのクリストファー・コストウ(Christopher Kostow)と、
ソムリエのロム・トゥーロン(Rom Toulon)は、素晴らしい黄金コンビ。

例えばVeal Breast and Hamachi with Caviar, Puntarella and Tendon Sucという料理を
シェフが用意すれば、ソムリエはそれに合わせて、他では手に入りにくい
ナパの小規模生産ワインや、世界各国からの選りすぐりワインを用意する。
テイスティング・メニューは$195、ワイン・ペアリングは$145。

しかしながら両者ともに、他所で食事をしても、ワイン・ペアリングを
オーダーした事は‘一切無い’というから驚きだ。
コストウ曰く「食事を通して、1本のワインを飲む方が面白いんだ」。

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彼の率直なコメントに感謝しながら、では、それぞれのコース料理に
別々のワインを合わせるワイン・ペアリングの意味は、
いったい何処にあるのだろうかと考えた。

誤解しないでほしい。
僕自身、食事の際、何種類かのワインを飲むのは歓迎だ。
もしも、この記事が一貫していないとしたら、たった今友人達との
Oenotriでの食事会から戻ったばかりかもしれない。
(5人で6本のワインを開けたので、一人当たり飲んだ量は…)

始めに我々が開けたのは白ワイン、次にオーク無しの赤ワインを開け、
最後にとっておきワイン(1990 Caymus Cabernet)に移った。
でも、それぞれのワインのグラスは常にテーブルの上に並んでいたし、
僕は食事の最後に、ケイマスを離れ、初めに開けたイタリアの白ワイン
2007 Forlorn Hope Napa Valley Semillonを、再び楽しんだ。

ところが、ワイン・ペアリングを頼んだら、なかなかこういう訳にはいかない。
料理ごとに、それぞれ選ばれたグラス・ワインが饗されるので、後戻りは難しい。
一度ケイマスのグラスを手にしたら、後戻りすることは許されない…といったシステムだ。

これは本当にあるべき姿だろうか?

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CIA(Culinary Institute of America) のヘッド・ソムリエ、トレーシー・ダットンは、
これまでに何度か完璧なペアリングを体験したという。
“人生を変えるような”ワインと料理のペアリングに出会う確率は、年に1度、
記憶に残るような素晴らしいペアリングは、月1回程度だという。
彼女が求めるのは、あくまでも料理とワインの共存で、競争では無い。

彼女は、常にカリフォルニアで最高の料理とワインに接する好機を持つソムリエだ。
その彼女にして、毎日のペアリングに魔法を期待しているわけではないのだ。

それならば何故、『このローストチキンのマッシュルーム・ソース掛けには、
Chateau Unobtanium 'Le Mystere' Aloxe-Corton 2006が完璧です。』
なんて記事が料理雑誌に載るのだろうか。(リッチな2005年の方が、優れているのに)

もしも2人で5種類のコース料理を食べるのだったら、
僕は、ソムリエの選んだワイン・ペアリングを頼むだろう。

でも4人だったら、上記のソムリエ達の意見を念頭に置きたい。
プロ中のプロがワイン・ペアリングのメニューを頼まないのだったら、
おそらく僕らもそれを見習うべきではないのかな。

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Meadwood

以上、ブレイクの記事でした。オリジナルはこちらからどうぞ♪

中華料理と一緒で、大勢の方が、色々なワインを開けて楽しめます。
でもとっておきのワインを持参する時は、人数が少ない方がたくさん飲めるし…(笑)。
また、一般的にレストランではドリンクで利益を挙げるので、
ソムリエがペアリング・ワイン用ボトルに割けるコストには、自然に上限があります。
バジェットの中で、如何にユニークで料理にぴったりなワインを発掘するか、
ここぞソムリエの腕の見せ所。

盲目的にワイン・ペアリングをオーダーするのでは無くて、
時と場合、そして選んでくれるソムリエを考慮した上で、楽しみたいですね☆

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by sfwinediary | 2011-02-25 08:48 | ワインの雑学
ワインもいいのだけれど、時には違った味も楽しみたい。
そんな時に訪れたくなるのが、カクテルバー。

ビール片手に喧噪の中、大声で怒鳴り合うダイブ・バーという年でもないので、
自然に足が向くのは、“美味しい”カクテルが楽しめる、ユニークな店。

カクテルにこだわりたい方にお勧め、サンフランシスコのバー3件をご紹介☆

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Bar Agrilcole バー・アグリルコル
(415) 355-9400 • 355 11th St (between Folsom St & Harrison St), San Francisco

バーというタイトルを冠しているけれども、
おしゃれなカリフォルニア料理を楽しめる、レストラン&バー。

先日訪れた時、シーフードパスタがFlour + Waterよりも美味しかったのでびっくり。
ポーチ席もあるので、暖かい日は外でカクテルをお供に夕食を楽しむのもいいかも。
(とはいえ、夜は寒いSF。でもヒーター付きなのでご安心を☆)

カクテルメニューと料理は、日替わり。
オリジナル・カクテルを楽しみたい方は、バーに陣取るのがベスト。

昨夜はフランスから訪れた友人夫婦と夕食会。食後にブレイクが、
爽やか風味のディジェスティフ・カクテルを造ってくれるようお願いした所、
サーバーの方がいまいち希望を把握できず、ちょっと不安に…。
でも、そのすぐ後でバーテンダー女史自ら、どんなカクテルが飲みたいのか、
わざわざテーブルまで聞きにきてくれたのには感激。
料理だけでなく、サービスも二重丸。
(ワインのマークアップは高めなので、ここではカクテルがお勧め☆)
あと10分ほど家に近かったら、毎日でも通いたいバー。

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Blackbirdブラックバード

カストロ中心部からすぐのブラックバードは、一見カフェのような雰囲気。
最近サンフランシスコで流行りは、樽で熟成させたカクテル(Barrel-aged cocktail)。
この店では去年の秋、マティーニを樽熟成させたカクテルを置いた所、
たちまち人気商品に。

今年1月に新登場したのはウイスキーをベースにしたBonnie & Clydeと、
テキーラ・ベースのCortez the Killerの2種類。
どちらも小さな樽で4週間ほど熟成させている、ユニークなカクテル。

早速飲み比べた所、軍配が上がったのは、味のスムースさでBonnie & Clyde。

ユタ州で造られているHigh West Silver Wiskey は、製造過程の樽熟成が無く、
ダブルでの熟成を免れているので、カクテル自身もなめらかな風味。
一方、テキーラはスモーキー過ぎて、樽熟成の意味が見出せなかったのが残念。

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The Hideout at Dalva (ザ・ハイドアウト@ダルヴァ)
3121 16th St, San Francisco

その名の通り、まさに隠れ家、The Hideout at Dalva。
映画館Roxieのすぐ右隣りにあるバーDalvaに入り、そのままどんどん進んでいくと、
奥にもう一つ、小さな入り口が☆
バーの中に隠れた、バー。

クリムゾン色の小さな部屋には、何客かの椅子と机。
階段を上ると、ロフト部分にソファー。
週末はかなり混むようだけれど、平日はそれほどでもないので、
ミッションでご飯食べた後、もうちょっと飲みたいな…なんて時にお勧め。

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by sfwinediary | 2011-02-22 05:31 | 気になるレストラン
Sideways=飲み過ぎて横になった状態。

アメリカにピノ・ノアール旋風を巻き起こした『Sideways』の著者が、
続編『Vertical』を発表しました。
Vertical(直立状態)のマイルズは、如何にして生みだされたのでしょうか?
そしてステファニーを演じた女優サンドラ・オーとの確執。

著者レックス・ピケット氏の核心に迫った、ブレイクのインタビューをお楽しみください。
(こちらの記事は著者W. Blake Grayの了承の元、日本語に訳しています。
著作権はPalate Press LLC, W. Blake Grayに帰属します。無断転載を禁止します。)
オリジナル記事はこちらからどうぞ☆ インタビュー其の1は、こちらです☆


Straight Discussion with Rex Pickett -by W. Blake Gray (Palate Press掲載)
(其の2)

ピケットとVerticalについての話をするのは、少々痛みが伴う。
何故なら小説の中では、IPNC(オレゴン州国際ピノ・ノアール・セレブレーション)を
始めとするワイン・イベントで、様々な美女がマイルズに身を捧げているが、
全てフィクションだからだ。

例えば、作中マイルズがNYタイムズ紙のワイン記者と寮で事に及ぶ場面があるが、
実在の記者、エリック・アシモフ(氏)は魅力ある女性とは言えない。
そしてピケットが書く事柄は全て実際の出来事がベースになっている。
ではこの記者のモデルは誰なのか?

聞かずにはいられずに質問すると、彼女のモデルはオレゴン州のワインライター、
キャサリン・コールだとの返答。
ピケットはIPNCに行かなかったので、イベントの様子をコールに取材したのだ。
「本の中の君のキャラクターとデートしてもいいかな?と聞いたら、
答えは『夫に聞いて見るわ』だった。
実際にはそんなことは起こらなかったけれどね。彼女はとても魅力的な女性だよ。」

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Sidewaysに登場するマヤとテラにも、サンタバーバラ郡に住む実際のモデルがいる。
しかしVerticalの中で、マヤは一瞬しか登場せず、テラに至っては、
ネバダ州リノに移住して、エキゾチック・ダンサーをしているという設定だ。

マヤについてピケットは語りたがらなかったが、テラについては大いに語ってくれた。

「サンドラ・オー(女優)は、僕の脚本をかなり変えてしまった。
名前をステファニーに変え、車ではなくバイクを乗り回し、挙句の果てにミックスの
子供まで登場させた。ボーリング場のシーンなんて最悪さ。
あれを見るたび、僕は我慢できなくて席を立つんだ。」

「アレキサンダー(ペイン監督)は、当時サンドラと結婚したばかり。
他の誰からも助言は受けなかったとしても、新婚の妻の願いとあればね。

でも、最終的に待っていたのは、苦い離婚。
この離婚で彼女はSidewaysの収益の半分を得たけれど、海外興業の収益分も
アレキサンダーの取り分だったから、かなりの額だっただろう。
そして彼女が離婚後の活躍で得た金は、彼女の物。分ける必要は無しさ。」

Verticalの執筆中、ピケットはペイン監督に、続編が出てもオーとは仕事をしない事を
確認している。「ラップ・ダンサーはアレキサンダーに送る小さなエールさ。
彼女が(テラの)役柄を変えた事は不愉快だ。だからこれはちょっとした腹いせかな。」

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小説後半になると、ジャックの登場は減る。ジャックのモデルはピケットの友人で、
IMDによると、映画業界の電気技師ロイ・ジタンズ。

「彼の人生はまさにパーティ、女性にとってキャットニップみたいな存在さ。」
と、ピケットは長年の飲み友達を表現する。終盤、ジャックがマイルズに
届け物をするシーンがあるが、これは最近起きた事実に基づいている。

「ジャックは飲み続け、マイルズは断酒。マイルズが友人を失くした場面は本当の事だ。
ロイは来る度にボトルを持ってくる。目の前で飲んでも平気だって言ったんだけど、
やっぱりそうはいかなかったみたいだね、訪ねて来なくなったよ。」

「ジャックとマイルズの間を取り持つ共通点は、アルコールにゴルフ。
でも一方が棄権したらどうだろう。もし三作目を書いたとしても、ジャックが
登場するかは分からない。彼はもはや僕の人生には関わっていないからね。」

ピケットがサンタバーバラ郡を見つけた理由は、ワインでは無くゴルフだった。
母の看病で辛い時期に、平日空いているコースを回ったのが始まりだ。

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マイルズが振舞っている様には、自分がワインについて詳しくない事を
ピケットは認めている。
二人とも、ピノ・ノアールの魅力は、複雑さと、その微妙さだと言ってはいるものの、
その実、良く読むと、マイルズの好むワインはいずれもビッグでジャムのような
ピノであり、どの赤ワインでも有り得るという事実に気付く。

例えばVerticalの中でマイルズは2007 Sokol Blosser Goosepen Pinot Noirを、
「素晴らしいジュースだね。歯が黒く染まる。口当たりがどでかい。興奮させてくれるよ。」
と表現している。

Sidewaysが揺り起して以来、アメリカのピノ・ノアールは、より大きく、よりリッチに、
まさにマイルズが好むワインになってしまったのは、皮肉な結果と言える。

「ビッグで、濃厚なピノが好きだ。」と語るピケット。
「中にはシラーを混ぜている輩も居るのを知っている。彼らにたぶらかされたのかな。
ワインのタイプ (description) にはそれほど興味がなかったと認めるよ。
それよりも僕が面白く感じたのはキャラクター (characters) だった。」

実生活でもピケットはメルローを軽蔑している。
が、映画で有名になったセリフは小説のどの版にも載っていない。
ペイン監督は、出版編集される前のオリジナルドラフトを読んでいたのだ。
ハードカバーの版権を持つピケットは、いずれ機会があれば
“I’m not drinking any fucking Merlot!”のセリフを加え直す心づもりでいる。

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Sidewaysを出版したSt. Martin’s Pressと、Vertcalの出版を拒否したKnopfの両社を、
ピケットはとても苦々しく思っている。
実の所、多くの事に対する彼の怒りや後悔の念は、とても明白だ。

「昔付き合ったガールフレンド達は、今も皆友人だよ。マッチョじゃないからね。
今の僕があるのは、全て元妻のおかげだ。
彼女については、マイルズと同じで、今でも自責の念に駆られている。」

少なくともマイルズもピケットも、無一文からは抜け出せた。
ピケットによると彼はSidewaysの出版と映画化により40万ドルの収益を得た。
そして、ペイン監督がVerticalの映画化を決定すれば、更なる収益を期待できる。
(Verticalはとてもダークな作品なので、映画化されるとしたら、
原作からは遠く離れたものになるだろう。)

「この本が1冊売れるごとに僕の取り分は$2.50から$3。Sidewaysは$0.70だった。
他にも、e-books、キンダル、いろいろ収入源がある。」

しかし、彼は芸術の為に苦しんでもいる。

「自分が幸福を見つけられるのか、わからない。離婚したのは僕の責任だ。
当時、自分を別の場所に移しかえて、それを題材にして執筆出来ると思ったんだ。」

ピケットと元妻バーバラは、80年代に幾つかの映画を製作している。
しかしリリースされたのは『From Hollywood to Deadwood』1本だけで、
評価も収入も芳しくなかった。妻と別れた理由については、もう定かでないという。
そしてその後の10年は、彼にとって貧困と恐怖の時代だった。

「90年代に2年半、一切女性に触れなかった時期があった。
デートに誘っても、いざ支払いの時に、クレジットカードが使えない…なんて
カッコ悪い事態に陥る危険性があったからね。」

「償還。それがマイルズに求める全てだ。放蕩に浸かってしまった罪に対する償い。
彼の存在を世に広める事が、償いの履行なのさ。」

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最後にピケットに投げたのは、もしも彼が幸福を見つけ出したらば?という質問だ。
執筆人生もそこで終わりになるのだろうか?

「マイルズが幸せになったとしたら、次の本が書けるかどうか分からないな。
昔、僕に銃を買う金があったら、とっくに自殺していたかもしれない。
でもその代わりに、僕は書いたんだ。」

以上、ブレイクのレックス・ピケット氏へのインタビューでした。
オリジナルはこちらからどうぞ。

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映画は何度も見ていたものの、最近まで原作本を手にした事はありませんでした。
小説を読んで驚いたのは、マイルズの人となり。
映画では俳優ポール・ジアマッティが、マイルズを良い感じに演じているし、
(嫌いになりきれない程度に、ワインオタクで嫌な奴…といった感じかな)
トーマス・チャーチも、女性に憎まれて当然のジャック役を、魅力的に演じています。
でも原作では二人とも、映画にも増して飲兵衛のどうしようもない奴ら。

しかし、Sideways、Vertical、作品の登場人物と著者の類似性を知ってしまうと、
なかなか痛み無しには読めない2作品です。
著者の表現する所を遍く読み尽す為にも、英語版でお楽しみください☆

映画版のSidewaysは、美味しい所をうまく引き出して、楽しく味付けしてあるなぁと
つくづく感じた次第です。

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by sfwinediary | 2011-02-16 03:21 | ワインな本
アメリカ人のワイン観を一掃、ピノ・ノアール旋風を巻き起こしたSideways。
その続編Verticalの出版を機に、先日ブレイクがサンタバーバラまで南下して、
著者レックス・ピケット氏にインタビューしました。

これまで触れられたこの無い、ピケット氏の核心に迫ったインタビュー、
パレット・プレスに掲載されたBlakeの記事を和約しましたので、お楽しみください。
(こちらの記事は著者W. Blake Grayの了承の元、日本語に訳しています。
著作権はPalate Press LLC, W. Blake Grayに帰属します。無断転載を禁止します。)
オリジナル記事はこちらからどうぞ☆


Straight Discussion with Rex Pickett -by W. Blake Gray (Palate Press掲載)

レックス・ピケットが嫌いな言葉、“アルコール依存症”。

小説『サイドウェイ(Sideways)』と、この度出版された続編『Vertical』の著者は、
ここ4カ月半ほど、アルコールを断っている。
何故なら、グラスに2杯も飲むと、後が止まらなくなってしまうからだ。

「サイドウェイの後、ちょっと飲み過ぎたんだ。」と語るピケット。
「それまでの10年は大変だった、ろくに酒を買う金も無くてね。
ボトルが1本あれば、翌日の為に半分残しておくといった暮らしだった。
そのあと成功を手にして、持てあましたんだね。」

大成功を収めた映画の制作に携わりながら、彼はそれをキャリアに生かしきれずにいた。
ようやく書き上げた続編のVericalは、物語の結末について出版社と折り合わず、決裂、
自社出版の運びとなった。

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「VerticalはSidewaysよりも、一層、僕なんだ。主人公のマイルズは、愛を探している。
けれども彼が酒を飲み続ける限り、愛は見つからない。これが本当のテーマだ。
僕自身、長いこと独身で愛を探している。でも成功した酒飲みセレブには、
誠実な関係を築くのは難しい。狂気の沙汰のピノを飲み、その場限りの関係ばかり。」

「だけどね、それだけで終わったら、小説は誕生しなかっただろう。
芸術家として誠実でありたい、たとえフィクションの世界であっても。
座右の銘は“迫真性”、それが作家としての僕の姿勢さ。」

この迫真性は、映画の中のマイルズとワインの関係にも表れている。
両作品で、彼はかなりの量を飲み、明らかにアルコール依存症だ。朝からグラスに
なみなみと、そして2件のワイナリー訪問の間にボトルを丸々1本空けている。

ピケットによると、両親、兄弟、皆アルコール依存症だという。
「両親は5時から飲兵衛だったんだ。5時になると、かなりハードに飲んだ。
なので、僕が両親を訪ねる時は、5時15分きっかりに行くんだ。45分過ぎになると
会えなくなる。でも、飲み始めの5時15分には、歓迎してもらえたからね。」

ピケットは遺伝子を非難する代わりに、母親の愛情不足を指摘している。
「子供の頃から、母は一度も僕を抱きしめてくれた事が無い。父が亡くなった時に、
僕は彼女を抱きしめたんだけれど、まるで植物を抱擁しているようだった。
彼女は子供を欲しくなかった。僕は母乳で育てられなかった。
そして2人の兄は、かなりのアルコール依存症さ。」

多くの人々にとって、Sidewaysの中で最もショッキングな場面は、
マイルズが母親の財布から金を抜き取るシーンだろう。
Verticalでは、それが出版拒否の理由となるエピソードにまでエスカレートしている。
(ここでネタは明かさないが、読んだ方、あれはあくまでもフィクションだそうです。)

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もしも、Sidewaysファンがマイルズとジャックの面白旅行を求めるならば、
Verticalは全く別の物語であると、ここで言っておこう。

「エージェンツは、ジャックとマイルズに、リオハ(スペイン)旅行をさせたら?
って言うんだ。でも、僕にとって最も大切なのは質。」

「僕らが勝ち取った賞は、僕にとって大きな意味を持っている。
映画スクリーンで、ヒッチング・ポスト(レストラン)から千鳥足で出てくる、
大写しの自分を見なければならないとしても、それは間違いなく僕自身だ。
まぁ、人々から、映画を、そして千鳥足を批判されたら、かなり辛いけどね。」

「僕はかつて、元妻にSidewaysの原稿を送ったことがある。
彼女の答えは、“燃やしなさい”だったよ。」

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Verticalの前半は、成功したマイルズが、ジャックを相棒に、ワインと
セクシーな女性ソムリエ達の間で、アップアップしている様が描かれている。
そして後半では、マイルズはジャックと袂を分かち、体の不自由な母親を、
彼女の生地であるウイスコンシン州に送り届ける旅へと出る。

まるで2つの物語が一つに合わさったような印象だが、事実その通り。
ピケットは、1頁の説明文に基ずいて、『The Road Back』という映画脚本を書き、
その後で小説化する契約をKnopf社と交わした。
しかしKnopf社では、Sidewaysの続編は望んでいなかった。

Verticalにもあるように、ピケットの母は脳こうそくを患ったが、
実世界でのピケットは、彼女のアルコール依存症を非難している。

「母は踵を腫らし、最高血圧は240以上あった。でも入院を嫌がった。
そして病院から帰宅して18時間後に、大きな脳梗塞に見舞われた。
なぜそれほど家に居たがったのかって?病院では酒が飲めないからさ。」

「脳梗塞の前と後、2人の母がいる。脳梗塞後の母は、子供みたいに駄々をこねた。
それまでは冷静な人だったのに。まるで、まったくの別人のようだった。」

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長くなるので2回に分けて掲載します。
待ちきれない方は、オリジナル英文をこちらからどうぞ☆
後半は、マヤ、テラ、ジャックといった登場人物の裏話、
ピケットの好むワインの実態、といった話が登場します。

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by sfwinediary | 2011-02-14 08:06 | ワインな本
ロバート・パーカー氏が、カリフォルニア・ワインのレビューには
もはや携わらないとのニュースが、先日、ワイン業界を走り抜けました。
替わりを引き継ぐのはAntonio Galloni氏。
ロバート・パーカー氏のセミリタイアに寄せた、ブレイクのコラムをどうぞ☆


Thoughts on Robert Parker's semi-retirement –by W. Blake Gray

R・パーカーが、もはやカリフォルニア・ワインのレビューに携わらないとの発表を聞き、
Enologix社はどう出るのだろうか?との思いが頭をかすめた。

Leo McCloskeyは、パーカーの評価に沿うようなワイン造りを技術的に手助けする
コンサルタント手法で、これまで成功を収めてきた。
この方法は、パーカーの後継者アントニオ・ガローニにも有効かもしれない。
恐らくEnologix社では今週あたり、これまでのガローニのイタリア・ワイン評価を
全てさらい、どうしたら高得点を狙えるのか、大忙しで模索している事だろう。

その他にも、次のような事項が思い浮かぶ。

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*パーカーは未だ全面引退したわけではなく、これはボルドーにとっては朗報だろう。
何故なら、彼の評価をなくして、ボルドーの高値はあり得ないからだ。
氏は膝を痛めている為に、今年のアンプリムール・テイスティング(En Primeur tasting)
への出席を危ぶまれるが、ボルドーのワイン業界に与えるその波紋は大きいだろう。
当分の間、彼が最も大切なポートフォリオを手放すことは無いだろうが、
何れは交代の時期が来るので、準備を促す意味では良い事かもしれない。

*ジェイ・ミラーは良い人間だ。でもワイン愛好家として言わせてもらえれば、
彼がワイン・アドヴォケート誌で、カリフォルニア評価を担当しないのは、
ありがたい事だ。

*パーカーのブルゴーニュに対する蔑視は、依然として鮮明だ。
一つの地域を、2人のライターが分けて担当する場所は、他には見当たらない。
オイシイ所は成功者ガローニに引き継がれ、Macon(ブルゴーニュ白ワイン)は
David Schildknechtの担当となったが、“残り物”といった感は免れない。

*ガローニが担当するのは、シャンパーニュ、イタリア、カリフォルニア、
シャブリ、そしてコート・ドールといった広域。
狂気の沙汰だ。
彼が業務をこなせたならば、パーカー氏以上にパワフルな存在となり得るだろう。
しかし、アドヴォケート誌のレベルを保ちながら、一人の人間が
これら全ての地域のエキスパートとなる事は不可能に思える。
こんなに多様で、遠く離れた地域にある、新しいワイナリーのみならず、
全ての小さなワイナリーをも熟知するなんて、とても無理だろう。

*この代替わり騒動の間、ワイン・スペクテイター誌が力を増すか?
可能性はあるだろう。
そして、小規模なEnthusiast, Wine & Spirits, International Wine Cellar
といった面々が、新しい読者を増やす好機でもある。
もしもこれらの雑誌が、パーカー氏と似た評価方法を採用するならば
(力強さを重視、酸味を否定)、追随する読者の獲得は容易いだろう。

*多くのブロガーのリアクションは、パーカーは古い恐竜であり、
得点法なんて問題外だ…というものだろう。
しかし僕は最近、西海岸で最大の小売業者が、5雑誌(上記)で
90点を取れなかったワインは、味見しないと公言しているのを聞いたばかりである。

*小売店にとって得点評価制は、消費者にアプローチし易い、魅力ある販売方法だ。
もしも新パーカーが、これを継続して提供出来なければ、
販売店が独自に得点を付けるのは自然の流れだろう。

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*今回の動きで、パーカーがカリフォルニアでのキャリアを閉じるならば、
いよいよVintners Hall of Fame(ワインの殿堂)入りの時期到来といえる。
選考委員会委員長として、ここでの個人的意見は控えるけれど、
彼は過去2回、ホンの一票の差で殿堂入りを逃している。
来年の投票結果の行方がなんとも楽しみだ。

*パーカーは、カリフォルニア、ボルドー、そしてローヌ地方の
“完璧に保管された状態の”オールド・ヴィンテージを評価する計画でいる。
しかしそれは自己満足でしかないだろう。
何故なら、それらのワインは購入不可能な品々で、ボトルのバリエーション、
保存状態ともに、彼の経験は、他の誰も分かつ事が出来ないものだからだ。

まぁ、そのうちに毎日、どんなランチを食べたかを報告してくれるようになったら
楽しいけれどね。
(彼がバーガー好きか?ハマス・ラップを食べた事があるか?とか、興味ありません?)

*そして最後に、誰もが知りたがっている問い。
ガローニの登場により、これまで過大評価され過ぎてきた、
カリフォルニア・ワインメーカーの幾人かに、再評価が為されるのだろうか?
現在、彼の双肩にはとてつもない責任が乗っている。
カリフォルニアへ、ようこそAntonio Galloni!

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以上、ブレイクのコラムの和約でした。
これからのカリフォルニア・ワイン、
影響度大の評論家の世代交代によって、新しい方向へと進むのでしょうか?
それとも旧態依然として、大きいことは良いことだ…という、
好ましくない方向へと進み続けるのでしょうか。

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by sfwinediary | 2011-02-08 08:29 | ワインなお話
フランスの甘いワインと言えば、ソーテルヌ。
食前&食後酒として、またフォアグラ料理とのペアリングなどで親しまれています。

そんな中、とってもユニークな楽しみ方を提唱するのは、
フランスのソルテーヌに95エーカーの畑を持つ、シャトー・クーテ(Chateau Coutet)。

先日、シャトー・クーテのファミリーメンバー、広報を担当する
アリーン・バリーさんにお会いする機会があり、目からうろこの夕食を堪能しました。
なんと、前菜からチーズまで、全てのコースを
シャトー・クーテのワインをお供に頂いたのです。

「25年熟成させたソルテーヌを食後に飲むのは、バイブル的。
でも現在では皆さん、様々な方法で食事を楽しんでいます。」とアリーンさん。
赤ワイン、白ワインといったカテゴリーに、もうひとつ、
『ゴールド・ワイン』を加えようと言うのが、彼女の使命。

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シャトー・クーテは、13世紀からの歴史を誇る、ボルドー、バルザック地方のワイナリー。
今から40年ほど前、当時ワインのロジスティクス(物流)の仕事に就いていた、
アリーンさんのお祖父さんがソルテーヌを訪れた際、クーテを買わないかと誘われ、購入。
以来1977年から、バリー家によるオペレーションが始まりました。

彼女自身は、幼少の頃両親と共にボストンに移住。
以来アメリカ暮らしだったのですが、2年前に叔父さんから勧められ、
オフィス生活から一転、ワイン業界に身を投じたそうです。

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この夜のレストラン・ベヌー(Benu ) は、SFでも評判のとても洗練された店。
ゴールド・ワインのお供にと、アリーンさんが勧めたのは、
ポーク・ベリー、ロブスター、そして羊といった料理たち。

クーテはソルテーヌでも甘さ控えめ、酸味に富んでいるので、
メイン料理とのペアリングも、なかなか。
「え?甘すぎ!」と思われた方、コーラを食事のお供にしたことありません?

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この夜、饗されたのは、シャトー・クーテ1989年、2006年、2007年の3種類。
(いずれもベイエリアで購入可能なヴィンテージ☆)

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2007 Chateau Coutet Barsac
アプリコット・ジャム、蜂蜜の風味と香り。
ミネラルと酸味に富んでいるので、様々な主采と一番合わせやすかったワイン。
湿度に富み、すばらしい貴腐の年だったそうで、濃厚で凝縮した舌触り。
保存長保存もいいけれど、今開けて充分楽しめます。

2006 Chateau Coutet Barsac
07年よりもシンプルで、香りもシャイな感じ。
超リッチだったトリュフのリゾットには、07、89よりも、
控えめな風味のこちらのクーテがピッタリでした。

1989 Chateau Coutet Barsac
07年よりも年月を経て、より複雑さを増した風味。
料理にもよくあったのですが、このワインだけ単独でも楽しみたい、素晴らしいワイン。

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そして夕食の最後を飾ったのは、チーズコース。
ソルテーヌとチーズは、相性最高♪

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面白いな…と思われた方、シャトー・クーテの持つテロワールに、生姜風味があるので、
生姜を使った料理のお供に、試してみてはいかがでしょうか。
香港に住んだ事があり、アジアにも詳しいアリーンさんによると、
和食では天ぷらや揚げ物系の料理と抜群の相性だそうです。
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by sfwinediary | 2011-02-04 07:33 | ワイナリーのお話
第5回Vintner’s Hall of Fame (ワインの殿堂)授賞式が、今年もナパで開かれます。
今回表彰されるのは、レイヴェンズウッド(Ravenswood)のジョエル・ピーターソン氏を
始め、UC DavisのVernon Singleton教授など、伝説的な面々。

授与式が行われるのは2月21日、プレジデントデー。
The CIA (テーブルクロスに隠しマイクを仕掛けるCIAではなくて、
The Culinary Institute of Americaの方ね☆) では、この日を記念して、
過去25年間にホワイトハウスで饗された、VHFのメンバーによるワインと料理を披露。

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歴代大統領の晩餐会メニューを楽しみながら、カリフォルニア・ワイン界の
伝説的な面々と直に話が出来る絶好のチャンスです。
Chairman of the Vintners Hall of Fame Electoral Collegeであるブレイクによると、
今年のチケットの売れ行きは、去年の4倍もの速さとか。

元ホワイトハウスのシェフWalter Scheib氏の自慢料理を始め、
去年、超美味のリゾットで参加者を驚かせた、現職の連邦議会議員
Mike Thompson氏の手料理を食べて、大統領気分を味わうのは如何でしょうか☆

参加費用は一人$175($100はtax-deductible)
詳しくは、こちらをご覧ください☆

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Joel Peterson氏の豪快な笑顔に会えます♪
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by sfwinediary | 2011-02-01 04:36 | ワインなイベント