カリフォルニア・ワインのブログ。 夫は米国人ワインライター。その影響でカリフォルニア・ワインに囲まれた生活をしています。SFから、ユニークなワイン情報をお届けします♪  ゴマ(石川真美)


by sfwinediary
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高いワインはなぜ美味しい?

$100のワインと、$35のワインが机に並んでいます。
値段を知った上で試飲したら、どちらを美味しく感じるでしょうか?

おそらく大多数の人が、$100のボトルに軍配を挙げるはず。

なぜ高価なワインは美味しく感じるのか?
答えはどうやら、ワインの味だけではなく、別の要素も絡んでくるようです。

ブレイクの記事を訳しましたので、お楽しみください。
英文オリジナルは、こちらからどうぞ♪


Why expensive wines taste better: Psychology 101 - By W. Blake Gray

僕は、心理学の学位を持っている。
まぁ、医療刑務所の看守にでもならない限り、仕事上では使えない学位かもしれない。
でも、基本的な人間の反応を理解するのには、なかなか役立っている。

例えば、なぜ評論家と一般消費者の好むワインは違うのか?
なぜワイナリーは、ボトルに$500もの値段をつけるのか?

別の例を挙げれば、評論家に酷評されたバンドのコンサート。
専門家は善しとしなかったにもかかわらず、ファンの間からは不満の声は聞こえてこない。
これって評論家って稼業が、つむじ曲がりの集団だからなのか?

実は、ここに重要な心理的要素が絡んでいる。
あなたがグラスワインを頼むときにも、この要素が働いているのだ。

Congnitive dissonance (認知的な不協和)と呼ばれている現象だ。

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昔、僕が大学で学んだ事をここに書いてみよう。

新入生たちが2時間のつまらない作業に駆り出された。
丸い模型を丸い穴に入れる…という単純な作業だった。

彼らは3つのグループに分けられていた。
20ドルの報酬をもらえるグループ。(当時の学生にとっては大金だ)
1ドルの報酬をもらえるグループ。
そしてタダ働きのグループ。
報酬額は、それぞれのグループに、事前に伝えられていた。

果たして、この単純作業を最も楽しんだのは、どのグループだったのか?

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答えは、$1の報酬を受け取ったグループ。
作業後のアンケートに対して、『楽しかった』と答えた人数が一番多かった。
そして、『つまらない』との返答が一番多かったのは、
$20の報酬をもらったグループだった。

作業は明らかにつまらないものだった。
$20もらった学生は、作業の目的を『報酬の為』と理解した。
タダで奉仕したグループは、『学術への貢献の為』として自分を納得させた。
なので、作業はつまらなくても、そこに何らかの意義を見いだせたのだ。

でも、$1だけの報酬をもらったグループは、
何でたったの$1の為に、2時間も単純作業を続けなければならないのか…
という、確たる理由が見つけ出せなかった。

彼らの脳は『この作業はつまらない』そして『この報酬はたったの$1だ』
という2つの調和しない考えを、懸命に処理しようとする。
しかし2つ目の報酬額は、変えられない事実だ。
そこで脳は、1つ目の『つまらない作業』という部分を、
いつの間にか『楽しい作業だ』にすり替える。
楽しくなかったら、2時間もこんな作業を続けた自分が阿呆に見えてしまうからだ。

ワイン、食事、コンサートチケット、カリビアンクルーズの旅、等々…。
あなたは、これらに支払った金額を知っている。
そして自分は阿呆ではないと知っている。
脳はこの対価に対して、どんな理由づけをするだろうか?

例えばM.I.Aの『音痴な歌声』も、『個性的でチャーミングだ』と聞こえるように
脳が処理してくれるっていう訳。

一方で、評論家は自腹を痛めて、コンサートを聞きに来ているわけではない。
そして彼らは、自分が仕事のためにそこに居る事を認識している。
なのでコンサートの出来が酷くても、彼の脳は『事実』をすり替える必要は無いのだ。

例えば、前座のバンド。
彼らの演奏が、メインのアーティストよりも素晴らしい…なんて思う人が
どのくらいいるだろうか?
もちろん腕前もあるのだろうが、皆、自分がどのバンドの為に
チケット代金を支払ったのか、ちゃ~んと認識しているのだ。

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M.I.A. Foxシアータでのコンサートは散々な様相でした…

僕の元には、フリーのワインが沢山送られてくる。
もちろん自腹を切って飲む場合だって多い。
そして僕自身、Congnitive dissonance(認知的な不協和)を認識しているにもかかわらず、
プロとして味見したワイン達よりも、
レストランで飲んだグラスワインに対して評価が甘くなりがちになる。

『対価を支払っている』→『自分は阿呆ではない』→『このワイン、悪くないぞ』
という図式。

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幾つかの影響例を、ここにあげてみよう。

1. 何故ファンはワイン(例えばケンダルジャクソンのシャルドネ)を、
評論家よりも高く評価するのか?
答えは単純、お金を支払って飲んでいるから。

2. ワインの値段が高いほど、Congnitive dissonanceの影響は大きくなる。
$2以下で買えるトゥ・バック・チャックを嫌うのは簡単だ、
でも$60で買った熟成し過ぎのシラーに対して、簡単に嫌いだと言えるかな?

これには利点もあって、多くのナパのワイン製造者はそれをよく理解している。
高い値が付いたワインは、販売には苦労するかもしれないけれど、
反面、これを買った人間は、そのワインを嫌う事は殆ど無いだろう。

3. 何故ロバート・パーカーは他の評論家よりも、高いスコアをつけるのか?
彼はどの評論家よりも、多くのワインに対して対価を支払っている。
自身でどのワインを買うかを選択し、ブラインドテイストはしない。
これらの事実から、どこの誰よりも一貫性を持った味覚の持ち主も、
Congnitive dissonanceに影響されていると言える。

4. 何故テイスティングルームで試飲するワインは美味しく感じるのか?
もちろん他にも様々な要素があるだろうけれど、
『数あるワイナリーの中でも、わざわざここを選んで、遠くまで足を運んできた。
その上、$10のテイスティング料金を払った』
という事実が、影響していないだろうか。

高すぎないテイスティング料金を徴収するのは、Congnitive dissonanceのいい動機となる。
(消費者の皆さん、すみません)

5. 何故プロの評論家は、ファンキーで表現力のある、
特にニッチなカテゴリーのワインに、飛びつかないのか? 
答え:我々にはその必要が無いから。
『サルファイト無添加のオーガニックワインを買ったら、足の裏のような匂いがする。
でも13ドルで買ったのだから(身体に良くて美味しいはず)…』
なんてCongnitive dissonanceには、影響されないのだ。
ふ~む、足の裏ねぇ。

6. 何故ボルドーの最高級ワインは、あのような高値を、
ボトルによっては$500以上もするような値段をつけられるのか?
答え:香港人は広東語でこう考えているから。
『僕はこのボトルに$900も払った。僕は阿呆ではない。
だからこれは$900の価値があるはずだ』って。
Congnitive dissonanceには、言語の違いによるバリアは無いのでした。

7.そして最後にもう一つ。
あなたがこのブログ記事を、ここまで読むのに3分はかかりましたよね?
その時間で、ワインを飲んだり、愛する人に電話したり、
ダークチョコレートを食べることだって、出来たはずなのに。
まぁ、この3分でどれほど素晴らしい事が出来たか、考えてみてください。

でもあなたは僕のブログを読んだ。そして阿呆ではない。

さて、僕のこの記事、これでに読んだブログの中で一番素晴らしいと思いませんか?
友達にも聞いてみてくださいよ。
彼らも、あなたと同じで、スマートなはず☆

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以上、ブレイクの記事の訳でした。
オリジナルはこちらからどうぞ♪


ワインでは無いのですが、先日、
まさにCongnitive dissonance な瞬間がありました。

SFジャイアンツの優勝記念Tシャツを2種類買ったので、
ブレイクに1枚選んでもらい、もう1枚を友人へのプレゼントにしようと思い、
AとBどちらが好き?と聞いたところ、彼が選んだのはA。

Tシャツを手に喜ぶ彼に、『Aは$35、Bは$40だったんだよ』と伝えたところ、
彼の中でCongnitive dissonanceの葛藤が…。
『ひょっとして値段が高い方が、クールなんじゃないかな?』
と、一瞬思い直したそうです。

結局、意思強く(笑)、初志貫徹で、Aを自分用にしましたが、
人間の脳の働き、面白いですね♪

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by sfwinediary | 2010-11-12 03:20 | ワインの雑学